4章 エバーネバーエンバーエデン
「彼の発動した術式を跡形もなく壊してから、暴走した魔力炉を封じ込めて魔力回路を全てを塞き止める。これでリスクはゼロだ。この先の未来、彼が問題因子になる可能性があるのなら、そうするのが一番安全と言える。」
「でも、そんな事をしたら…。」
「この世界で生きていく上で、二度と魔法は使えなくなる。魔法というものから繋がりを絶たれ、ハーフエルフであるという特性も失われる。魔法が使えない、ただの人間と同じだ。自身のアイデンティティとなるものはすべて失われるが、彼が起こした代償としてはこれで丁度良いと私は見ているよ。」
エターナルという世界で魔法が使えない事は、事実上の死と同じだ。しかも国王として頂点に君臨し続ける者が、魔法の国という場所で生き続けるには無理がある。
そして、魔法というものに執着してきたスィノルにとって、それは死ぬことと同義。
「通信の相手にも話しておくとね、魔力炉自身を書き換えて再構築する事は出来ない。これはこのエターナルという世界で、神が決めた絶対的なルールだ。その抜け道を見つけ、魔力暴走を起こして綻びを生み、別の術式と繋げたのは見事な発想だとは思うが、決して賢い選択ではなかった。だからこそ、再び綻びないようにするのが最善なのだよ。」
「他人であるからこそ残酷でいられるというのは、第三者の特権ですね。」
「勿論。君たちだって変わらないはずだ。」
知らない人間と、情の深い相手と比べるのはあまりにも酷だ。どれくらいの関わりと縁を持ったかで、その人物が命を落としたその辛さの大きさが異なるのは事実なのだから。
だからといって粗末にしても良いというわけではない。
彼がそういう意図で言葉にしているわけではないとわかっていながらも、言い表せない不快感を覚える。
此処へ来てスィノルと対面して、謁見と称して言葉を交わしたあの時と似た感情。
問いとも言えぬそれ対して、あえて返事はしなかった。
それ以上何かを口にしてしまえば、互いが言葉の刃物で刺し合うだけになる。
互いに異なる価値観を理解し合うには、今はあまりにも時間が少なすぎる。
「シオンさん、無事に終わったらまた連絡頂けると助かります。」
「暫く後になるかもしれませんが、どういう結果になろうと必ず伝えるとお約束します。」
「ありがとうございます。どうか皆さんご無事で。」
それを最後にゼファオとの通信は途絶える。
すべき事は決まった。あとはその方法について、自分自身で考えなくてはならない。
スィノルの魔力炉に繋がっている術式に触れるには、物理的に体の内側へ触れる必要がある。とはいえ、皮膚を裂いてそこに触れるにはあまりにも肉体的な負担が大きい。
自分で考えられる、最小限で負担の少ない形。
細い針を一か所から体内に通してそこから繋がっている術式の先に繋げていく。
体内に通した細い針金の先から、複数の糸を伸ばして、それぞれの術式にからませて壊していく。後は綻んだ箇所が漏れ出ないように、結んで止血するようなイメージ。
これならいけるんじゃないだろうか。
念のために警戒はしているが、後方にいる彼はそれを見守るだけで、特に動こうとする気配はなかった。
「始めます。」
指先に集中して彼の魔力炉に向かって糸を伸ばした。
それは自分で思っていた以上に一瞬の出来事。
パリンとガラスの割れるような音がして、すべての術式は砕け散り、あっという間に消えていった。
綻びとなっていた箇所も自身が作り出した魔法の糸で結ぶと、綺麗に固定されたまま落ち着きを取り戻していく。
「でき、た…。」
それこそ時が止まったと錯覚するほど速く、想像していた通りに事が進んでくれた。
城全体を包み込んでいた怪現象は消え、スィノル自身の魔力反応も感じられる。
ホッと一息つこうとしたのと同時。背後から何かが弾ける音と共に大量の液体が背をわずかに押し、室内を一瞬にして染め上げた。
「でも、そんな事をしたら…。」
「この世界で生きていく上で、二度と魔法は使えなくなる。魔法というものから繋がりを絶たれ、ハーフエルフであるという特性も失われる。魔法が使えない、ただの人間と同じだ。自身のアイデンティティとなるものはすべて失われるが、彼が起こした代償としてはこれで丁度良いと私は見ているよ。」
エターナルという世界で魔法が使えない事は、事実上の死と同じだ。しかも国王として頂点に君臨し続ける者が、魔法の国という場所で生き続けるには無理がある。
そして、魔法というものに執着してきたスィノルにとって、それは死ぬことと同義。
「通信の相手にも話しておくとね、魔力炉自身を書き換えて再構築する事は出来ない。これはこのエターナルという世界で、神が決めた絶対的なルールだ。その抜け道を見つけ、魔力暴走を起こして綻びを生み、別の術式と繋げたのは見事な発想だとは思うが、決して賢い選択ではなかった。だからこそ、再び綻びないようにするのが最善なのだよ。」
「他人であるからこそ残酷でいられるというのは、第三者の特権ですね。」
「勿論。君たちだって変わらないはずだ。」
知らない人間と、情の深い相手と比べるのはあまりにも酷だ。どれくらいの関わりと縁を持ったかで、その人物が命を落としたその辛さの大きさが異なるのは事実なのだから。
だからといって粗末にしても良いというわけではない。
彼がそういう意図で言葉にしているわけではないとわかっていながらも、言い表せない不快感を覚える。
此処へ来てスィノルと対面して、謁見と称して言葉を交わしたあの時と似た感情。
問いとも言えぬそれ対して、あえて返事はしなかった。
それ以上何かを口にしてしまえば、互いが言葉の刃物で刺し合うだけになる。
互いに異なる価値観を理解し合うには、今はあまりにも時間が少なすぎる。
「シオンさん、無事に終わったらまた連絡頂けると助かります。」
「暫く後になるかもしれませんが、どういう結果になろうと必ず伝えるとお約束します。」
「ありがとうございます。どうか皆さんご無事で。」
それを最後にゼファオとの通信は途絶える。
すべき事は決まった。あとはその方法について、自分自身で考えなくてはならない。
スィノルの魔力炉に繋がっている術式に触れるには、物理的に体の内側へ触れる必要がある。とはいえ、皮膚を裂いてそこに触れるにはあまりにも肉体的な負担が大きい。
自分で考えられる、最小限で負担の少ない形。
細い針を一か所から体内に通してそこから繋がっている術式の先に繋げていく。
体内に通した細い針金の先から、複数の糸を伸ばして、それぞれの術式にからませて壊していく。後は綻んだ箇所が漏れ出ないように、結んで止血するようなイメージ。
これならいけるんじゃないだろうか。
念のために警戒はしているが、後方にいる彼はそれを見守るだけで、特に動こうとする気配はなかった。
「始めます。」
指先に集中して彼の魔力炉に向かって糸を伸ばした。
それは自分で思っていた以上に一瞬の出来事。
パリンとガラスの割れるような音がして、すべての術式は砕け散り、あっという間に消えていった。
綻びとなっていた箇所も自身が作り出した魔法の糸で結ぶと、綺麗に固定されたまま落ち着きを取り戻していく。
「でき、た…。」
それこそ時が止まったと錯覚するほど速く、想像していた通りに事が進んでくれた。
城全体を包み込んでいた怪現象は消え、スィノル自身の魔力反応も感じられる。
ホッと一息つこうとしたのと同時。背後から何かが弾ける音と共に大量の液体が背をわずかに押し、室内を一瞬にして染め上げた。
