4章 エバーネバーエンバーエデン

「心臓は動いているけれど意識が戻るかどうか…それどころか、生きているかすらわからない状態でしょうか?」

「その認識でほぼ合っているよ。そして、普通の魔法を発動しただけではこうならない。彼が発動した魔法は、人類が手を出してはいけない禁忌の魔法で間違いないね。」

自らの魂に何か特別な術式をかけた結果、それは成功と言うべきかわからない結果へと導かれた。
絡み合った術式を読み解くも、複雑すぎて自分には理解ができない。

「心臓に近い部位には魔力炉と呼ばれる人が魔法を発動するための源が存在する。彼はその回路そのものに変化を与えようと術をかけたものの、結果的には失敗したというのがほぼ正解に近い。」

「魔力炉を再構築して変化させようとして、姿を保てなくなったと?」

「似ているけれど少し異なるかな。どちらかというと、この世界のルールから外れて存在が曖昧になってしまっている。」

そう言われてふと眠ったままになってしまった憂夜と朝華の二人を思い出す。
ふとゼファオがこぼしていた“時間に干渉する魔法でもない限り無理だ“という言葉を思い出す。
ツィオゲスに来る前に見た、緑の光が灯されたあの魔法。魂があるとされている、心臓のあたりに光を灯して術式を付与していたことを思い出した。

「それはつまり、時間干渉の魔法と使った。ということでしょうか。」

「君がどこまでを知っているかわからないのだけれど、12神の加護を受けた者にしか使えない特別な力のひとつ“時間干渉”の魔法を使った影響だね。神の領域に踏み込んだが故に、彼は今存在が曖昧になりつつある。」

「それ、は、初耳です。」

そう口にして少し引っ掛かりを覚える。
今まで自分の中で引っかかっていた、明らかに特別な能力を持った人たちと関わり、なんとなくそうではないかと考えようとしたこともあった。

普通ではありえないような特別な力。魔法を発動するにしても、知識や経験、才能だけではきっと限界がある。
魔力の源となる魔力炉から魔力をのせて、それを術式に変化させる。そうして出来た式を刻印という受け皿に乗せて初めて発現する。
魔方陣はそれ以上に複雑な式になっているからこそ、大きな力をのせることが出来るけれど、人の脳でそれを一瞬で処理するにはあまりにも情報量が多すぎる。
そこに詠唱という形で術式にプラスして乗せる事で、より強力な魔法が使える用にはなるが、それにだって上限というものは存在する。

カームで出会ったキリシスの力は、おそらく刻印由来のもののみ。自分にのみ魔法をかける事で最小限に、かつ純度を高めた術式だ。
ただ、炎の魔法を扱っていたルオという少年はどうだっただろう?明らかに発現できる魔法の限界を超えていたし、あれを防ぐ結界を一瞬で発動したちしにしても特例と言える。
ゼファオですら、室内に強固な結界を張るのに数日かかっていると話していた。それを簡略化したとしても、枚数でカバーできるような威力ではなかったはず。
その後に出会った玄由も、ハーフドラゴンだからという説明では収まらないくらいの能力者だった。
ゼファオの口ぶりからも、それは特別な理由があるからと口にしていた。

ヘルクロッカは少し特殊な文化があると話していたが、実際にそれは巫女ではなく、神の子と書いて神子(みこ)と呼ぶのが過去の消えた歴史上での正解だとすれば、特別な力を持つ者は12神から何かしらの加護を受けている者を指す存在の事ではないだろうか。

あまりにも飛躍しすぎている。
けれど、もしもそれが本来の歴史だとすれば、ある程度は辻褄が合う部分が出てくる。

それに、その特別な能力を持ち合わせている者たちは、自然と関わりをもつようにできているようにも感じていた。
ただ、そこにスィノルはその特別な加護をうけていなかった。ゼファオも、キリシスも、グマラもだ。

それでいうと、ユリアはどうだった?その力を受けている可能性の高いちしは、同様に加護を受けているのだろうか。

そこまで考えて、本来の目的から脱線した事にハッとして目の前のスィノルに向き直る。
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