4章 エバーネバーエンバーエデン
「それに、調査に入るにしても現象自体が未知なので、最低限安全の確保が出来ない以上、進むに進めずという現状なんです。無駄に犠牲を出すのは避けたい、という思いが皆強くて。」
現場に行くとすれば、術式さえ見えれば対処できる自分が行くのが最も適役といえる。
「ウィル、この件一旦自分に任せてもらってもいいかな?」
「それはいいと、思いますけれど…。その、シオンさんおひとりで大丈夫なんでしょうか?」
「うーん。正直なところ、大丈夫とは言い切れないのが悩ましいところだけど。術式が見えて、それを繋ぎなおす力が役に立てるんじゃないかなって。」
「そんな能力が!?」
「俺にもよくわかっていないんだけれど、多分なんとかできると思うんだ。」
確信があるわけではないが、それが魔法によって引き起こされている事象であれば、ヘルクロッカでの魔方陣の時のように切り離して繋げなおすことができるのではないかと考えている。
現状、ツィオゲスにはこの事象について誰も何もわかっておらず、無駄に被害を出す事に恐れている以上、誰かがその一歩を踏み出さなければならない。
これまでの研究の件も含め、自分が残してきた後悔と罪を少しでも償いたいという気持ちも強い。
「よろしく、お願いします。」
暫く悩んでいたウィルだったが、控えめにお辞儀すると震える声で伝えてきた。
色んな言葉を飲み込んで、どうしようもない現状に救いを求める。そんな葛藤と願いが混ざったお願いの声だった。
今の時点でわかっていることは、スィノルが何らかの実験に失敗をしたことで、魔力暴走が継続していること。
実害はないものの、現実で見えている風景に、氷に包まれる城の映像を流しているような幻覚と幻聴が重なって見えていることくらいか。
「本人に会ってみない事にはわからない、よな。」
スィノル本人は城の玉座の奥にある、研究部屋の中で眠っていると予測はされているものの、実際に彼の姿を確認したわけではないようだったし。
城の中に進んで調査を行うまでは、何とも言えない。
氷に包まれた映像と重なっている入口付近まで歩みを進めてみる。特にこれといって攻撃を受ける事もなく、これだけの事象が起きているにもかかわらず魔力反応はそれほど強く出ていなかった。
結界のように術式が張り巡らされているわけでもなく、触れてみようと手を伸ばせば青白い氷のような光がそこにあるだけで感触は一切ない。
このまま城の中へと進んでいく。
「誰かいますかー?」
城に残されたままの人がいないか、念のため声をかけながら進んでみるも、人の気配らしきものは感じ取れない。
玉座の奥にある研究室へとそのまま歩みを進めていくが、城の中は幻聴と幻覚以外に変なところは何もなく、あっという間に玉座の前まで辿り着いた。
大きな扉の前まで来て初めて、先ほどまで一切なかったはずの気配の中にポツリと1人だけ魔力反応を感じることが出来た。
それがスィノルのものかどうかはわからなかったが、わずかながらに何者かの反応がある事だけはわかる。
「行くしかないか。」
ゆっくりと扉を開けると、そこには玉座の前に立ち尽くしている一人の姿。
後ろ姿しか見えなかったが、その人とはこれまで出会った記憶がなかった。
一つに結われた長い深緑色の髪をした男性。長めの羽織物を身にまとった、不思議な雰囲気を放つ人物だった。
この国の人間だろうか?
ウィルと話していた感じでは、先に誰かを通した様子はなかったはずだけれど。
敵なのか味方なのかもわからないが、そっと彼に近づきながら声をかけてみる。
「すみません。俺はこの事象について調査に来たんですが、貴方は一体…。」
こちらの問いかけに振り向いた男性の顔を見て、これまで暫く感じていなかった、強烈な頭痛が襲ってきた。記憶に関連するキーに触れた時のあの感覚だ。
「っ!なんで、こんな時に…。」
頭の中がビリビリと電流を流されたかのよう刺激を受け、目の奥が熱をもつ。
この熱の正体が、涙を流しているのだと気づいたのは数秒遅れてのことだった。
「涙?どうして。」
自分でも何が起きているかわからないが、頭痛が落ち着いて冷静さを取り戻すころには、目の前にいる彼が“ちしと関連がある人物である”ことだけを思い出していた。
現場に行くとすれば、術式さえ見えれば対処できる自分が行くのが最も適役といえる。
「ウィル、この件一旦自分に任せてもらってもいいかな?」
「それはいいと、思いますけれど…。その、シオンさんおひとりで大丈夫なんでしょうか?」
「うーん。正直なところ、大丈夫とは言い切れないのが悩ましいところだけど。術式が見えて、それを繋ぎなおす力が役に立てるんじゃないかなって。」
「そんな能力が!?」
「俺にもよくわかっていないんだけれど、多分なんとかできると思うんだ。」
確信があるわけではないが、それが魔法によって引き起こされている事象であれば、ヘルクロッカでの魔方陣の時のように切り離して繋げなおすことができるのではないかと考えている。
現状、ツィオゲスにはこの事象について誰も何もわかっておらず、無駄に被害を出す事に恐れている以上、誰かがその一歩を踏み出さなければならない。
これまでの研究の件も含め、自分が残してきた後悔と罪を少しでも償いたいという気持ちも強い。
「よろしく、お願いします。」
暫く悩んでいたウィルだったが、控えめにお辞儀すると震える声で伝えてきた。
色んな言葉を飲み込んで、どうしようもない現状に救いを求める。そんな葛藤と願いが混ざったお願いの声だった。
今の時点でわかっていることは、スィノルが何らかの実験に失敗をしたことで、魔力暴走が継続していること。
実害はないものの、現実で見えている風景に、氷に包まれる城の映像を流しているような幻覚と幻聴が重なって見えていることくらいか。
「本人に会ってみない事にはわからない、よな。」
スィノル本人は城の玉座の奥にある、研究部屋の中で眠っていると予測はされているものの、実際に彼の姿を確認したわけではないようだったし。
城の中に進んで調査を行うまでは、何とも言えない。
氷に包まれた映像と重なっている入口付近まで歩みを進めてみる。特にこれといって攻撃を受ける事もなく、これだけの事象が起きているにもかかわらず魔力反応はそれほど強く出ていなかった。
結界のように術式が張り巡らされているわけでもなく、触れてみようと手を伸ばせば青白い氷のような光がそこにあるだけで感触は一切ない。
このまま城の中へと進んでいく。
「誰かいますかー?」
城に残されたままの人がいないか、念のため声をかけながら進んでみるも、人の気配らしきものは感じ取れない。
玉座の奥にある研究室へとそのまま歩みを進めていくが、城の中は幻聴と幻覚以外に変なところは何もなく、あっという間に玉座の前まで辿り着いた。
大きな扉の前まで来て初めて、先ほどまで一切なかったはずの気配の中にポツリと1人だけ魔力反応を感じることが出来た。
それがスィノルのものかどうかはわからなかったが、わずかながらに何者かの反応がある事だけはわかる。
「行くしかないか。」
ゆっくりと扉を開けると、そこには玉座の前に立ち尽くしている一人の姿。
後ろ姿しか見えなかったが、その人とはこれまで出会った記憶がなかった。
一つに結われた長い深緑色の髪をした男性。長めの羽織物を身にまとった、不思議な雰囲気を放つ人物だった。
この国の人間だろうか?
ウィルと話していた感じでは、先に誰かを通した様子はなかったはずだけれど。
敵なのか味方なのかもわからないが、そっと彼に近づきながら声をかけてみる。
「すみません。俺はこの事象について調査に来たんですが、貴方は一体…。」
こちらの問いかけに振り向いた男性の顔を見て、これまで暫く感じていなかった、強烈な頭痛が襲ってきた。記憶に関連するキーに触れた時のあの感覚だ。
「っ!なんで、こんな時に…。」
頭の中がビリビリと電流を流されたかのよう刺激を受け、目の奥が熱をもつ。
この熱の正体が、涙を流しているのだと気づいたのは数秒遅れてのことだった。
「涙?どうして。」
自分でも何が起きているかわからないが、頭痛が落ち着いて冷静さを取り戻すころには、目の前にいる彼が“ちしと関連がある人物である”ことだけを思い出していた。
