4章 エバーネバーエンバーエデン

「12神は、悪魔族の私がこの国からエターナルに自由に出入りできるのを制限したいと考えている。それを交渉の材料に、時の神に直談判しに行ってみてはどうかな。何も変えたくない、元に戻したいと君がそう望んでいるならばだがね。」

「交渉してどうなるって言うんです。時間を戻したって、運命が変わらなければ結局何も変わらないままですよ。」

「さきほど話した通りだよ。1回目の“時”に戻してもらって、フェオにかけられている呪いが発動しないように魔力炉を操作すればいい。神の奇跡でその能力はそのままに、1回目の時に戻る事だって出来るかもしれない。フェオに神の血が混ざっている以上、本人が操作しようと意思をもって取り組めば形を変える事は可能なはずだ。まぁ、これもあくまでも臆測ではあるけれどもね。」

「魔力炉を操るって、魔法を発動するために必要な魔力炉そのものを断ち切れば良いとでも?」

「早い話がそういう事だね。」

エターナルで魔法が使えない事は死を意味する。それは先ほど話していた、12神による神の加護が受けられないからだ。
呪いによってかけられている不老不死や転生が出来ない事についてはわからないが、侵食は魔法によるものだとわかっている。
12神が一番厄介としているのは、この侵食の能力についてだ。それ以外については強く口にしていなかったはず。それが出来るとすれば、12神側としてはメリットしかないはずだ。

そして、このレヒューズという神の加護を受けないように作られた世界の中でなら、彼も魔法の影響を強く受けずに生きていけるのではないだろうか。

ただ、許しても良いのか?今までの事を。

侵食していなければ、もしかしたらスィノルはあんなふうに横暴にならなかったかもしれない。
ゼファオも禁術に手を出してまで兄に執着をし、目の前で兄を消されることはなかったかもしれない。
ヘルクロッカの件も魔方陣があんな形に変わる事は無かったかもしれない。
自らの欲に溺れ、願いの大きさが肥大してより大きな代償が必要となることも、本当はなかったかもしれない。

失敗したらどうする?
もし交渉できずにまた取り込まれたら。

「他の適任者に任せたらいいのに…どうして自分なんかに。」
「歴史は4回改変されたと話していたね。」
「はい。」
「4回目の君にしか出来ないからだよ。多くの命を犠牲にして手に入れた能力だからこそ、本来特別な者しか手に入れる事が出来なかった能力を、君は手に入れることが出来た。」
「こんなもの、借り物の能力で本物とは違います。」
「そうだね。本物の加護を受けた能力者とは違う。だからこそと言えばいい。魔法の国という一つの重要な知識と歴史が、今の君の能力を作り出した。」

突如として大きな爆発音とともに地面が揺れ、激しい雷鳴が空を鳴らして空気を震わせる。
それは過去に見たことのある魔法だった。

見てごらんと指したその先にいたのは、過去に出会った事のある人物。
出来れば会いたくなかったかもしれない、ハーフドラゴンの彼と、炎を扱う金髪の少年。
そして、その奥にいる和服を着た橙色の髪をした人物。

「全員仲間だったってことですか。」
「まぁね。自体が大事になる前に私が指示を出して裏で手引きしてたってところかな。」
「そんなの…。」
「未来がわかっていた分、狡いかもしれない。ただそれで回避できた事象もあったはずだ。時間遡及をして重さを増した代償は発生しても、誰一人死んではいないだろう?私はすべての歴史の記憶があるけれど、これまでの過去では全員、それは酷い死に様だったよ。それで、1回目に戻ったとして、今回よりも優れた結果で終わるとは限らないし、繰り返された時間の中でどうなるかも予測は出来ない。」

そう言われてハッとする。確かに憂夜も朝華も、そしてスィノルも生きている。ユリアは契約を結んで命を受け渡したが、ちしは先ほど途中で死んでしまったと話していた。だとすると、彼女はこの先…。
そこまで考えて、もしそれが運命ではないのなら変えられるのではないかとよぎる。

「ちしはこの先、死ぬ運命にあるんでしょうか。」
「私がわかる事は、彼女は3度目の時に普通に生きていたよ。でなければ今回も既に命を落としている頃だろうね。」
「運命じゃ、なかった…と。」
「それと、彼女が言い出したことなんだよ。シオンを絶対救いたい、とね。双子の彼女たちはどちらも今回で既に諦めていたが、彼女だけは諦めていなかった。それだけかな、私から言えることは。」
17/23ページ
スキ