4章 エバーネバーエンバーエデン
全てが揺らいでしまいそうだった。正直、逃げてなかった事にして終わりにしてもいいと思ってしまった。
まさか自分がそんな大きな事に関わっているだなんて、想像もしていなかったのだから。
ただおかしいとは思っていた。気が付いたらそこにいた、という謎の出生。
人間とは異なるハーフエルフであるスィノルからの特別扱いや、この歪みきった能力。
森の中で経験した、やたらと力に執着していた自分の心の闇。
自分が傷ついても構わないから、誰かを助けたいと思い衝動的に行動する強い意思。
何かに突き動かされているような気はしていたけれど、その想像をはるかに超えていた。
自分の願いの全てが、自分が望む方向とは真逆を指し示していただなんて、考えてもいやしなかった。
「はは。」
人ってやつは、何かと理由をつけて逃げるものなんだなと呆れた笑いしか出ない。
屋敷の近くにある少し大きい樹木の下に座り込んで、ただ風に揺られるだけの草木を見つめていた。足元には必死に獲物を運ぶ働きアリがいて、ぼうっと眺めながら漠然とこれからどうしたらいいのかと考えているところだった。
「青年、悩んでいるね。」
声の主が不老不死であるキュシスタという人物のものだとわかりはしたが、失礼とは承知ながらも返答をする元気は出なかった。
「解決策が一つだけあると言ったら、君はどうしたい?」
「解決するって、何をどうしたらいいんですか。」
「12神が直接手を下してくれれば早いものだが、それには期待が出来ない。魔力炉を操作できるのは神だけと先刻言ったがね、神の血を受け継ぐフェオならそこに干渉できると私は考えている。」
「何が言いたいんですか。」
「もし君が死ぬことが歴史改変のトリガーになっているのだとしたら、それは君自身で解決しなければならない。」
「そのトリガーを起こしていた本人は、もう歴史改変を行う力は残っていません。俺が諦めれば今度こそ終わりなんです。」
「ただ、もしフェオが生き残る事で、このエターナルが滅ぶとしたら?」
「そんな事…。」
「彼がエターナルで恋人を探すことで侵食を振りまく。その影響を受けた人類は魔法で願いを叶えようとして、代償から歪みを生じさせる。それを解決しようにも、12神ですら処分を下せなくて困っている。となると、頼るのは君しかいないという事にならないかい?」
「それがどうして俺になるんですか。」
「君の持つ能力が一番の理由かな。古に失われた“分解と歪み”の魔法が、フェオを止める唯一の方法になり得るかもしれない。
4回目のこの世界で研究員として知識を得たエタルニタは、その魔法を使えるようにするには、魔法の国を代償とする必要があると気付いた。あそこには、エターナルの魔法の全てが詰まっていたからね。仮説とはいえ、代償の指定が出来たのはほぼ奇跡に近いね。」
「でも、もう時間を戻して歴史を改変出来る人がいなくなれば、それこそ全てが終わるじゃないですか。」
「今度は12神がそれに気付き、正確に完全な状態で時間を巻き戻すだろう。そこで代償が必要であればまた魔法の国についても、君とその仲間も全て同じくこの4回目の世界のままループさせられる可能性だってある。」
「それじゃあ、終わりは来ない…ってことですか。」
「その可能性がある、という話さ。そして、最初の時間操作の件については私の責任だから、そこについては私自身が罰を受けるつもりでいる。私も君たちを巻き込んだ加害者だ。だからこうして今回こそはと私も直接君と関わっている。これまではしてこなかった行動をあえてしてね。」
「っそんな事言っても、もう既に変わってしまった過去は元に戻せないし、得られるものなんて…。失ったものの方が大きすぎて俺には。」
浅はかにも敵に突っ込んで向かっていき、勝手に死んだ自分こそ一番の原因だ。
消えてしまった魔法の国は?その民は?魔法の歴史はどうなる。もとには戻らないじゃないか。
自分という存在がいなければ消えなかったかもしれない、その重責にとても耐えられない。考えたくない。それのおかげで得られた力だと知ってしまったのだから。
八つ当たりとわかっていても、まだ希望を捨てずにどうにか出来ると言いたげな彼の口調に、腹が立たずにはいられなかった。これまでの4度繰り返された歴史と時間の流れに、きっとちしもユリアもユリンも、他の皆も疲弊しきっている。それで、自分が動いてもしまた事態が悪化したらと思うと、浅はかな考えではどうにも動けなかった。
フェオを説得し、円満に解決が出来る事が、間違いなく正しいと裏付けてくれる証明が欲しかった。
まさか自分がそんな大きな事に関わっているだなんて、想像もしていなかったのだから。
ただおかしいとは思っていた。気が付いたらそこにいた、という謎の出生。
人間とは異なるハーフエルフであるスィノルからの特別扱いや、この歪みきった能力。
森の中で経験した、やたらと力に執着していた自分の心の闇。
自分が傷ついても構わないから、誰かを助けたいと思い衝動的に行動する強い意思。
何かに突き動かされているような気はしていたけれど、その想像をはるかに超えていた。
自分の願いの全てが、自分が望む方向とは真逆を指し示していただなんて、考えてもいやしなかった。
「はは。」
人ってやつは、何かと理由をつけて逃げるものなんだなと呆れた笑いしか出ない。
屋敷の近くにある少し大きい樹木の下に座り込んで、ただ風に揺られるだけの草木を見つめていた。足元には必死に獲物を運ぶ働きアリがいて、ぼうっと眺めながら漠然とこれからどうしたらいいのかと考えているところだった。
「青年、悩んでいるね。」
声の主が不老不死であるキュシスタという人物のものだとわかりはしたが、失礼とは承知ながらも返答をする元気は出なかった。
「解決策が一つだけあると言ったら、君はどうしたい?」
「解決するって、何をどうしたらいいんですか。」
「12神が直接手を下してくれれば早いものだが、それには期待が出来ない。魔力炉を操作できるのは神だけと先刻言ったがね、神の血を受け継ぐフェオならそこに干渉できると私は考えている。」
「何が言いたいんですか。」
「もし君が死ぬことが歴史改変のトリガーになっているのだとしたら、それは君自身で解決しなければならない。」
「そのトリガーを起こしていた本人は、もう歴史改変を行う力は残っていません。俺が諦めれば今度こそ終わりなんです。」
「ただ、もしフェオが生き残る事で、このエターナルが滅ぶとしたら?」
「そんな事…。」
「彼がエターナルで恋人を探すことで侵食を振りまく。その影響を受けた人類は魔法で願いを叶えようとして、代償から歪みを生じさせる。それを解決しようにも、12神ですら処分を下せなくて困っている。となると、頼るのは君しかいないという事にならないかい?」
「それがどうして俺になるんですか。」
「君の持つ能力が一番の理由かな。古に失われた“分解と歪み”の魔法が、フェオを止める唯一の方法になり得るかもしれない。
4回目のこの世界で研究員として知識を得たエタルニタは、その魔法を使えるようにするには、魔法の国を代償とする必要があると気付いた。あそこには、エターナルの魔法の全てが詰まっていたからね。仮説とはいえ、代償の指定が出来たのはほぼ奇跡に近いね。」
「でも、もう時間を戻して歴史を改変出来る人がいなくなれば、それこそ全てが終わるじゃないですか。」
「今度は12神がそれに気付き、正確に完全な状態で時間を巻き戻すだろう。そこで代償が必要であればまた魔法の国についても、君とその仲間も全て同じくこの4回目の世界のままループさせられる可能性だってある。」
「それじゃあ、終わりは来ない…ってことですか。」
「その可能性がある、という話さ。そして、最初の時間操作の件については私の責任だから、そこについては私自身が罰を受けるつもりでいる。私も君たちを巻き込んだ加害者だ。だからこうして今回こそはと私も直接君と関わっている。これまではしてこなかった行動をあえてしてね。」
「っそんな事言っても、もう既に変わってしまった過去は元に戻せないし、得られるものなんて…。失ったものの方が大きすぎて俺には。」
浅はかにも敵に突っ込んで向かっていき、勝手に死んだ自分こそ一番の原因だ。
消えてしまった魔法の国は?その民は?魔法の歴史はどうなる。もとには戻らないじゃないか。
自分という存在がいなければ消えなかったかもしれない、その重責にとても耐えられない。考えたくない。それのおかげで得られた力だと知ってしまったのだから。
八つ当たりとわかっていても、まだ希望を捨てずにどうにか出来ると言いたげな彼の口調に、腹が立たずにはいられなかった。これまでの4度繰り返された歴史と時間の流れに、きっとちしもユリアもユリンも、他の皆も疲弊しきっている。それで、自分が動いてもしまた事態が悪化したらと思うと、浅はかな考えではどうにも動けなかった。
フェオを説得し、円満に解決が出来る事が、間違いなく正しいと裏付けてくれる証明が欲しかった。
