4章 エバーネバーエンバーエデン
淹れてきてくれたお茶をコポコポとティーカップへそそぐと、目の前にそっと差し出される。
湯気がのぼっているお茶を見ながら、先ほど会話していたのがユリアの双子の妹であるユリンという人物である事について考えていた。
「毒なんて入っていないから安心して。」
そうして二つ注がれたティーカップうち、片方を口元へ運んで飲み込んでみせた。
「今更、飲み物に毒を入れて殺すような事なんてしないだろう。」
レファウルでのやりとりで、目の前にいる彼女が自分に害を与える気がないことは既に分かりきっている。
今更飲み物に毒を盛って息の根を止めてしまおうだなんてきっと考えていない。
「そうね。でももし私がユリアだったら、シオンの事を殺そうとしていたかもしれない。」
「どういう事だ?」
「ユリアは貴方の事が大好きで、大嫌いだったから。」
「それは、俺がいなければこんな風にはならなかった…って事になるんだろうか。」
一緒に過ごしていたあの町にいたのが自分の知っているユリアだとして、研究所での出来事や、これまでの歴史改変をしなくてはならなくなった出来事の中心に自分がいるとすれば、恨まれていても仕方がない。
ただ、そうせざるを得ない状況を作り出してしまった要因がどこにあるのか。それが本当に自分のせいだったらと考えると、いたたまれない気持ちになる。
「うーん…そうかもしれないし、そうじゃないとも言えるわね。誰が悪いとかそういう話じゃないもの。」
「最初のきっかけを作ったのはちしのマスターが使った時間の魔法だって聞いたけど、その後で歴史を変えなければならない程の事をしてしまったのは自分のせいなんじゃないかって、心のどこかで考えていたんだ。」
「それについても、私からはどう伝えたら良いのか、正直わからないの。マスターのかけた魔法が時間操作に影響していたのは、本人も完全に計算外だった。それほどまでに強力な魔法になっていたとは思わず、気が付けば代償として歪みが発生していたの。そしてその代償が、まさか諸悪の根源と呼ばれる“彼”の目覚めのきっかけになるとは思っていなくて。」
「目覚めって、まるでこの世界に眠らされていたような言い方じゃないか。」
「最初はここ(レヒューズ)で眠りについていたの。彼は、マスターの血縁者だから。」
血縁者。かつて絶滅した悪魔の種族の血が混ざっている、人であって人ではない者。
これはあくまで仮定だけれど、もし諸悪の根源の彼が12神の一人と恋に落ちて生まれた子だとしたら?それは神にとっては汚点であり、消し去りたい事実になるんじゃないだろうか。
「なんとなく気づいたかもしれないけれど、フェオも不老不死なの。とはいっても、実際には血による強すぎる力を利用して、他者の肉体から自身を構築して、そこに乗り移っては人生を何度も繰り返している疑似的なもの。そして、そんな事が出来るのは悪魔と人間のハーフに神の血液が混ざった、彼だからこその力。魂や魔力炉に影響をもたらす術なんて、本来は使えないから。」
「忌み子か…。純血ではない事で忌み嫌われ、神にも悪魔にも、ついには人にもなれなかった。」
「そんな中、優しくされたら誰だって恋に落ちてしまうと思わない?しかも、彼はよりによって12神の一人と恋に落ちてしまったのだから。」
「それが、彼の探している恋人なのか。」
「そして悲劇は起きた。その関係を良く思わず邪魔する神を殺し、最終的には愛する人をも手にかけた重罪人。そうして、禁忌に禁忌を重ね続けた。」
「穢れた血ってシュウレが話していたのはそういうことか…。」
「本来ならエターナルという国の地を踏むことが叶わない呪いをかけられていたはずだった。でも、その影響を受けないようにレヒューズに眠らせていたの。」
「でも、今の彼はエターナルの地を自由に探索できているじゃないか。」
「呪いを緩和するために、生きた人間の肉体を乗っ取ったり、肉体を生成して転生を繰り返してエターナルを彷徨い続けているの。だから、最初に見た彼とは皆違う姿で会っているわ。」
夢で見た時の彼の姿は最初、金髪に銀のグラデーションがかかった髪色の男性だった。瞳の奥は闇に包まれていたのは同じでも、ヘルクロッカで出会った彼はブロンドベージュの髪に黒がかった色合いの髪色で、瞳の色も紅さに黒を足したような異なった姿だった。
「エターナルには“神の加護”っていうルールが強制的に適用されているの。それは、12神の愛、繋、破壊、再生とかいろんな加護。その加護を受け続けることによってあの地で人類は生きる事が許される。だから、諸悪の根源であるフェオは、あの地で生き続けられない。加護を受ける資格が宿っていないから。」
「そうして肉体を転々として、恋人をずっと探し歩いていると。」
「そう、そして本人も無意識に、時に意識的に侵食の力を振りまいている。そうして侵食された人の手によって深い部分に眠っていた願いをかなえるために、代償が必要なほど強力な魔法が使われてしまう。だから、フェオさえエターナルから出てこなければ、そうはなっていないと言われているのよ…。」
「願いの為の代償、か。そういえば、ユリンって子はどうして歴史改変なんてしたんだ?」
「それは、シオンのせいかもしれない。あれから考えていたの、私の体を通してユリンと会話をしながら、じっくりとね。」
湯気がのぼっているお茶を見ながら、先ほど会話していたのがユリアの双子の妹であるユリンという人物である事について考えていた。
「毒なんて入っていないから安心して。」
そうして二つ注がれたティーカップうち、片方を口元へ運んで飲み込んでみせた。
「今更、飲み物に毒を入れて殺すような事なんてしないだろう。」
レファウルでのやりとりで、目の前にいる彼女が自分に害を与える気がないことは既に分かりきっている。
今更飲み物に毒を盛って息の根を止めてしまおうだなんてきっと考えていない。
「そうね。でももし私がユリアだったら、シオンの事を殺そうとしていたかもしれない。」
「どういう事だ?」
「ユリアは貴方の事が大好きで、大嫌いだったから。」
「それは、俺がいなければこんな風にはならなかった…って事になるんだろうか。」
一緒に過ごしていたあの町にいたのが自分の知っているユリアだとして、研究所での出来事や、これまでの歴史改変をしなくてはならなくなった出来事の中心に自分がいるとすれば、恨まれていても仕方がない。
ただ、そうせざるを得ない状況を作り出してしまった要因がどこにあるのか。それが本当に自分のせいだったらと考えると、いたたまれない気持ちになる。
「うーん…そうかもしれないし、そうじゃないとも言えるわね。誰が悪いとかそういう話じゃないもの。」
「最初のきっかけを作ったのはちしのマスターが使った時間の魔法だって聞いたけど、その後で歴史を変えなければならない程の事をしてしまったのは自分のせいなんじゃないかって、心のどこかで考えていたんだ。」
「それについても、私からはどう伝えたら良いのか、正直わからないの。マスターのかけた魔法が時間操作に影響していたのは、本人も完全に計算外だった。それほどまでに強力な魔法になっていたとは思わず、気が付けば代償として歪みが発生していたの。そしてその代償が、まさか諸悪の根源と呼ばれる“彼”の目覚めのきっかけになるとは思っていなくて。」
「目覚めって、まるでこの世界に眠らされていたような言い方じゃないか。」
「最初はここ(レヒューズ)で眠りについていたの。彼は、マスターの血縁者だから。」
血縁者。かつて絶滅した悪魔の種族の血が混ざっている、人であって人ではない者。
これはあくまで仮定だけれど、もし諸悪の根源の彼が12神の一人と恋に落ちて生まれた子だとしたら?それは神にとっては汚点であり、消し去りたい事実になるんじゃないだろうか。
「なんとなく気づいたかもしれないけれど、フェオも不老不死なの。とはいっても、実際には血による強すぎる力を利用して、他者の肉体から自身を構築して、そこに乗り移っては人生を何度も繰り返している疑似的なもの。そして、そんな事が出来るのは悪魔と人間のハーフに神の血液が混ざった、彼だからこその力。魂や魔力炉に影響をもたらす術なんて、本来は使えないから。」
「忌み子か…。純血ではない事で忌み嫌われ、神にも悪魔にも、ついには人にもなれなかった。」
「そんな中、優しくされたら誰だって恋に落ちてしまうと思わない?しかも、彼はよりによって12神の一人と恋に落ちてしまったのだから。」
「それが、彼の探している恋人なのか。」
「そして悲劇は起きた。その関係を良く思わず邪魔する神を殺し、最終的には愛する人をも手にかけた重罪人。そうして、禁忌に禁忌を重ね続けた。」
「穢れた血ってシュウレが話していたのはそういうことか…。」
「本来ならエターナルという国の地を踏むことが叶わない呪いをかけられていたはずだった。でも、その影響を受けないようにレヒューズに眠らせていたの。」
「でも、今の彼はエターナルの地を自由に探索できているじゃないか。」
「呪いを緩和するために、生きた人間の肉体を乗っ取ったり、肉体を生成して転生を繰り返してエターナルを彷徨い続けているの。だから、最初に見た彼とは皆違う姿で会っているわ。」
夢で見た時の彼の姿は最初、金髪に銀のグラデーションがかかった髪色の男性だった。瞳の奥は闇に包まれていたのは同じでも、ヘルクロッカで出会った彼はブロンドベージュの髪に黒がかった色合いの髪色で、瞳の色も紅さに黒を足したような異なった姿だった。
「エターナルには“神の加護”っていうルールが強制的に適用されているの。それは、12神の愛、繋、破壊、再生とかいろんな加護。その加護を受け続けることによってあの地で人類は生きる事が許される。だから、諸悪の根源であるフェオは、あの地で生き続けられない。加護を受ける資格が宿っていないから。」
「そうして肉体を転々として、恋人をずっと探し歩いていると。」
「そう、そして本人も無意識に、時に意識的に侵食の力を振りまいている。そうして侵食された人の手によって深い部分に眠っていた願いをかなえるために、代償が必要なほど強力な魔法が使われてしまう。だから、フェオさえエターナルから出てこなければ、そうはなっていないと言われているのよ…。」
「願いの為の代償、か。そういえば、ユリンって子はどうして歴史改変なんてしたんだ?」
「それは、シオンのせいかもしれない。あれから考えていたの、私の体を通してユリンと会話をしながら、じっくりとね。」
