今日から始まる島ライフ!







「桐生さん、俺気づいた事があるんですよ」
土産物を遥勇に渡した後、その背を見送っていた春日が急に神妙な顔つきになって言った。
十月に差し掛かろうかという時期でも日中の沖縄の日差しはまだまだ暑い。けれど、残暑も落ち着きつつある。汗ばむほど暑くはないはずだが、と桐生は春日の顔を覗き込み、彼の額に手を触れさせた。
「お前、熱でもあるのか?顔が真っ赤だぞ」
「え、いやっ、これは……その……!」
「少し横になるか。遥に布団を敷くように頼んでくる」
「あっ、待って、待ってください桐生さん!大丈夫ですから!お気遣いなく!」
春日にズボンの裾を引っ張られて桐生は渋々と立ち止まった。お気遣いなくと言うが、気を遣っているのは春日の方だ。横浜に住みながらリゾート経営も手掛けている彼は、毎回訪ねてくる度に大量の土産を持参する。『ハワイでは世話になりましたから』決まってそうも言う。あれからもう四年も経つのに春日はいつまでも他人行儀な態度を崩さなかった。
「本当に大丈夫なんで!ね、ほら、座って座って」
さっきまで桐生が使っていた座布団を叩いて笑う春日は、どこか落ち着きを失っているように見えた。かと思えば、座布団に腰を落ち着けるなり俯いて黙ってしまう。笑ったり怒ったりと感情の起伏に富んだ春日だが、今回は特別せわしない。これは何かあるなと桐生は怪しんだ。
「春日。何考えてる」
「っえ!?べ、べつに何も……」
「嘘つけ。お前の態度見てりゃわかる。恋人おれの目をごかせると思ったか?」
言うと、春日は意を決した表情で姿勢を正した。そして深々と頭を下げて声を張り上げた。
「桐生さん!俺とドンドコ島で暮らしてくださぁい!!」





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