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誕生日SS(2021.05〜2022.03)





「はよー、楓誕生日おめでと」
「楓兄ちゃんおめでと」
「楓おめでと!ジャージ忘れないでね!」
「楓も17か早いなあ。おめでと」



まずは家族からお祝いされる。



「楓く〜ん誕生日おめでと〜〜!!!はいこれ被ってね!!!!」
「楓くんおめでと!!!はいこれも!!!」
「篠宮くんおめでとう。写真撮るからこっち向いてね」



次に昇降口で待ち伏せされていた優輝先輩、前園先輩、三崎先輩に絡まれて三角帽子と「今日の主役」と書かれたタスキを付けられ写真を撮られる。
撮り終わると「じゃあこれは次の羽奏誕で使うから返して」と早々に剥がされる。

その後教室に向かう途中で同じクラスの神田と葉月に、にやにやされながら「おめでとー」とお祝いされる。

もちろん友達と部活の先輩、後輩にもお祝いしてもらった。

…ここまでいろんな人にお祝いしてもらったけど一番身近にいるあの人からは何もない。
いつもなら日付変わるタイミングでメッセージ送ってくれるのに。
ぼーっと彼女とのトーク履歴を眺めていると着信音が鳴った。



「どうした?まだ帰ってないの?」
「あのね今から調理室来れる?」
「まあ大丈夫だけど」
「じゃあ待ってるね!」



そう言うと通話は切れてしまった。
部活で何か作ったのかな?
それとも…と少し期待をしながら急いで調理室へ向かった。







「奈々ー、おまたせ」
「楓!こっちこっち!」



手招きされた方へ向かうとそこには焼き立てのキャロットケーキが用意されていた。



「誕生日おめでとう!本当はすぐ言いたかったんだけどケーキと一緒の方がいいかなと思って我慢してたの!」
「いつ言ってくれるんだろうってずっと気になってた。でも超嬉しい、ありがとう」
「ふふん!じゃあ口開けて、はいあーん!」



一口サイズに切り分けられたケーキを差し出されたのでいつものように口を開いた時だった。
調理室の外から視線を感じる───。
大体は予想はつくが気になるので見に行くとやっぱり神田と葉月がそこにいた。



「2人の分もあるよー!一緒に食べよ!」



奈々の言葉に「お邪魔しちゃってごめんね〜」と2人はにやにやしながら調理室へと入っていった。
結局こうなるのかと思いつつ、どこか嬉しい気持ちがあったのは内緒だ。



「篠宮!ろうそく立てたから早く消して!」
「なんでお前らがはしゃいでんだよ。主役は俺じゃねーのかよ」



17の形をしたろうそくに灯る火を吹き消しながら今日のことを思い返した。
たくさんお祝いの言葉をもらって、プレゼントを用意してくれる人もいて。
祝日でもないただの平日なのに。


ああ、俺って愛されてんだな。





2021.10.20
「篠宮楓は愛されてる」



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