あたしの誕生日は夏休み中だから
直接お祝いされることは少ない。
でも今年は親友たちがお祝いしに来てくれた！
朝から夜までずーっと一緒にいてくれて…だから見送るときは寂しかったなあ。



「ただいま〜」
「おかえり。お友達ちゃんと見送った？」
「うん。ちゃんとばいばいしてきた〜」
「ふふ。茜ったら嬉しそうな顔しちゃって。そんなに楽しかったのね」



「まあね」と緩み切った顔で返事をすると「早くお風呂入ってきなさい」とあしらわれた。
…そういえば今年は奈々と優香がお祝いしてくれたけど、それまではママと2人でお祝いしてたっけ。
近所のケーキ屋で好きなの買ってくれたな〜…。



「…」



＊



「ママ」
「ん？どうしたの」
「奈々がね、今日ケーキ作ってくれたの。一緒に食べようよ」
「…あら。こんな時間に食べると太っちゃうんじゃないの？」
「今日はいいの。…あたしの誕生日だから！」



毎週楽しみにしているドラマを見ながら
奈々の手作りケーキをほおばる。



「ん、おいし〜い！奈々ちゃんだっけ？すごい上手に作るのね」
「そうなの！奈々は本当に料理が上手なの！優香の誕生日のときもケーキ作ってくれたんだ〜」
「最近茜の口からは奈々ちゃんと優香ちゃんの話ばっかり出てくるわね」
「あー、まあ一番仲良いからね」



ママはケーキを食べる手を止めると「よかった」と呟く。



「ほら…昔ちょっといろいろあったじゃない？それで高校でも上手くやっていけるか心配だったんだけど、こうやって仲良しのお友達が出来て、お誕生日もお祝いしてもらって…」
「ちょっ、なんなの急に！恥ずかしいじゃん！」
「えーたまにはいいじゃん！私の大事な娘の誕生日なんだもの！」
「なんなのもう！！」



＊



その日は久しぶりにママと同じ部屋で寝た。
甘えたかったからじゃない。
ただ一緒にいたかったから。

あたしね、もう大丈夫だよ。
今度はもう間違えないから、
心配しなくていいんだよ。




2021.08.04
「葉月茜と親娘の時間」