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気になるあの子は






突然だが私には好きな人がいる。



その人は今年復学した一つ年上で同じクラスの三崎みさき羽奏わかなくん。



彼は物静かな人で仲の良い友達といる時もその姿勢は変わらない。部活は写真部に所属していて賞を受賞するくらいの腕があるらしい。写真部の前に展示されてたのを見に行ったことがあるけど写真に詳しくない私が見てもわかるくらい納得の一枚だった。



そんな私が三崎くんに恋をしたきっかけは些細な事だ。それはとある昼下がりのこと。私は授業の内容をぼーっと聞き流しながらなんとなく教室を見渡していた。真面目に取り組む子、堂々と睡眠学習をする子、友達と手紙のやりとりをする子…。授業中なんてこんなもんだよね、と視線をノートに戻そうとした時、ふと三崎くんのことが目に入った。真面目に授業を受けている様子だけど何か引っかかるな…。すると窓から舞い込んできた風に髪がなびき、普段は隠れている耳元に無線イヤホンが見えた。



(三崎くん授業中に堂々と音楽聴くんだ…!)



意外だな…と思いしばらく眺めていたら偶然三崎くんと目があってしまった。やばい、全部見てたのバレちゃう。なんとか誤魔化そうと考えていると、三崎くんは全てを察したようで口元に人差し指を立てると『内緒だよ』と口パクでこちらに向かって言ったのだ。

物静かな男子の普段とのギャップに秘密の共有。
それまでただのクラスメイトだと思っていたのに、単純な私にとってそれは恋に落ちるには十分すぎる情報だった。






───しかし彼にはある噂があった。


『知ってる?三崎くんに告白すると二度と口聞いてもらえなくなるらしいよ』



どうしてそんな噂が出たかというと、それはある女子生徒が三崎くんに告白したことがきっかけだ。その子は同じ写真部で前から三崎くんに想いを寄せていたらしい。ある日決心して三崎くんに告白したところある言葉で突き返された。



『僕は誰とも付き合う気はないんだよね』



ここまでなら普通なのだが問題はこのあと。想いは届かなかったけど「せめて前と同じように友達として接してほしい」と伝えたところ三崎くんはこう言ったのだ。



『そんなの無理だよ。一度告白されて同じように接してほしいなんて僕にはできない。悪いけど君とはもう話すことないから。ごめんね』



その後本当に話す機会なんてなくて2人きりになるとあからさまに避けられるのだ。どうしてもというときは口を聞いてくれるがそれもどこか突き放すような冷たい受け答えらしい。


どうしてそんなに人の好意を突き放すのか、その理由を知っている人は誰もいない。しかしその事実を知った上でも私の三崎くんへの想いは止められない。振り向いてくれなくていいの。この気持ちは私の中で秘めておくから。








叶わない恋なら今だけ夢を見させて。



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