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誕生日SS(2021.05〜2022.03)





『あの大人気ゲームに登場するマスコットキャラがなんと!ビッグサイズのぬいぐるみになって登場!詳しくはお店で───』







「すみません付き合ってもらって」
「全然いいよ!でもこれ結構並んでるよね…」



先日突然SNSで発表されたにも関わらずお店にはぬいぐるみを求め多くの人が集まっていた。
僕と優香さんもその一部…というより僕がどうしても欲しくて、でも男一人で買いにくる勇気がないので付き添いで来てもらったのだ。
だって推しキャラのぬいぐるみは何としても手に入れたいし───!



───数時間後



「…まさか目の前で完売するなんて思わなかったね」
「…」
「で、でもほら!次の入荷まで…って待てないよね」
「…すみませんせっかく誘ったのに。今日はもう解散してまた夜通話で…」
「あ…翼くん!」



すれ違う人が欲しかったぬいぐるみを抱える姿を見ると嫉妬でどうにかなりそうだった。
仕方ないと強く自分に言い聞かせ、なるべく周りを見ないように早歩きで家路についた。
優香さんにも申し訳ないことしたな…あとで謝らなきゃ…。







「…ただいま」
「え!?やばいやばい翼帰ってきた、神田!神田早くして!!」



帰宅した僕を見るなり兄の樹は慌てた様子で階段を駆け上がっていった。
優香さんのお兄さんも一緒みたいだけど何をしてるんだ…?
様子を見に2階へ向かうと僕の部屋から話し声が聞こえたのでそーっと覗き込んだ。



「え…」



まるで時間が止まったみたいに僕は目の前の光景に目を奪われた。
だってそこには────。



「これはその〜ほら、神田と出かけてたら偶然見つけたから!な、神田!」
「何言ってんだよお前。翼くんが欲しがってたから驚かせ…」
「わーーー!!!!それ以上言うなばか!!!」



僕は目の前のそれをぎゅっと抱きしめた。
さっきまでのことなんてどうでもよくなるくらい嬉しさが込み上げていっぱいになった。



「…でもどうして。兄ちゃん普段こんなことしないじゃん」
「は?お前本当ゲーム以外に関心なさすぎじゃね?今日誕生日だろ」
「………………あ」






※なごもん→神田優香のHN
西宮→前園翼のHN


『あははそうだったんだ!でもよかった!西宮くんの推しだもんね!』
『もう触り心地最高です…たまらないです…』
『幸せそうで何よりだよ〜。あ、そうだ忘れないうちに誕生日おめでとう!』



ピロンと音が鳴り『なごもんさんからギフトが届いてます』とメールが来た。



『ありがとうございます。今日はいい夢見れそうです』
『なんか声も眠そうだし今日はここまでにしよっか。お疲れ様〜』
『お疲れ様です』



ゲーム機の電源を落とし、大きなぬくもりに包まれそのまま眠りについた。
その日はちょっと楽しい夢を見た。
僕がゲームの主人公になって隣にはもらったぬいぐるみと同じサイズのキャラ。
そして兄ちゃんと優輝さん、優香さんと冒険するそんな夢────。




2021.12.11
「前園翼と大きなぬくもり」



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