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誕生日SS(2021.05〜2022.03)





『誕生日おめでとう』



日付が変わると同時に幼なじみである楓からメッセージが届いた。
どこかでメッセージを送ってくれるんじゃないかって思っていたので嬉しくて笑みが溢れる。
「ありがとう!」と返信をすると今度は着信が入った。
話したい気分なのかな?と思いながら電話に出ると「外見て」と言うのでカーテンを開けて窓から外を覗くとそこには楓の姿があった。



「どうしたの?」
「今から出かけるよ。おばさんたちには話してるから」
「状況が全く理解できないんだけど…?」
「今から誕生日が終わるまでめちゃくちゃ楽しいことするってこと!つーか寒いから早くして、時間ない!」



その言葉に「わかった!」と返事をして急いで支度をして家を出ると楓のお兄さんである隼斗くんが車を用意して迎えに来ていた。
何があるんだろう…でも楓が考えたことだからきっと楽しいことは間違いない!







車に揺られてどれくらい経っただろう。
窓の外は朝焼けと見慣れない景色が広がっていた。
県外に出ていることはわかったけどどこに向かってるんだろう…。



「ん…はよ。もう起きたの?」
「おはよ。ねえ楓、これどこ向かってるの?」
「めっちゃいいところ」



私がしつこく聞いても楓はそれの一点張りで話は進まない。
それから数分後「着いたよ」と隼斗くんに言われようやく車から降りる。
透き通るような空気と赤とオレンジに身を包んだ木々が広がるそこはとある山のようだ。
周辺を歩いているととある香ばしい香りに惹き寄せられた。



(あれ…この香りって…!)



「か、楓!ここもしかして!」
「そ。俺らの移動距離なんてたかが知れてるじゃん?だから兄貴に頼んで連れてきてもらったってこと」



車の目的地は私がいつか行きたいと思っていたこの時期限定のメープルメロンパンが販売されるお店だった!
しかもすぐ売り切れてしまうほどの人気ぶりなので入手が困難とも言われている…!
早い時間にもかかわらず既に数人が並んでいるのがその証拠だ。



「どうしよう私すごい嬉しい!本当ありがとう!」
「これだけじゃねーよ。誕生日終わるまでめちゃくちゃ楽しいことするって言ったじゃん。ほら早く並ぼうぜ」
「…!うん、そうだね!」



私の誕生日はまだ始まったばかり───。




2021.11.14
「柊奈々を喜ばせたくて」
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