誕生日SS(2021.05〜2022.03)
「…お前ら何しに来たんだ」
「何ってそりゃ〜みかちゃんの誕生日お祝いしに来たに決まってんじゃん!」
そう話すのは俺が担任をし、今月巣立ちを迎えた生徒の一人である前園樹。後ろには彼と仲の良い神田優輝と三崎羽奏もいる。
「だからってわざわざ学校まで来る奴がいるか?」
「本当はクラスみんなでみかちゃんの誕生日祝おうぜー!ってなってたんだけどさすがにみんな予定があるし大勢で押しかけても迷惑だろうから俺らが代表でってことで来た!」
「それに俺たちのことお祝いしてくれたのに先生だけお祝いしないってのは違うじゃん?」
「安心してください。ちゃんと許可は取ってあります」
誰に何の許可を取ってるんだと思い職員室を見回すと川崎先生が満面の笑みでこちらを見ていた。おまけに「桐ヶ谷先生の今日の仕事はお祝いされることですよ!」なんて言うもんだから追い返すことも逃げることもできなかった。
まあでもそういうことなら───。
「お前らちゃんと俺のこと満足させてくれるんだろうな?」
「当然!それでは会場へご案内しまーす!」
そんなこんなで俺の誕生日パーティーは始まったのである。
*
「ん…このケーキ誰かの手作りだな」
「正解!2年の柊さんに頼んだんだぜ〜。みかちゃんお店のケーキは知り尽くしてるだろうから嗜好を変えてみたんだよな!」
「普通に美味いな…あとでお礼しとくか」
ケーキを食べ終わると「じゃあ次は画面に注目〜」とスマホを取り出し俺に見せてきた。画面に映し出されたのはある一本の動画。内容は生徒たちからのお祝いメッセージだ。
『桐ヶ谷先生はっぴーばーすでー!』
『みかちゃんおめでと〜!赤点ばっか取ってまじごめんね〜!』
『先生お誕生日おめでとうございます!』
「…いつの間にこんな動画を撮影してたのか」
「優輝が中心になってみんなに動いてもらったんです。編集したのは僕ですけどね」
「企画したのは俺なー!!!」
お返しが欲しくてやってたわけじゃない。ただ最後の学校生活で何かいい思い出ができればいいなと思って受け持った生徒の誕生日を祝おうと思った、それだけなのにまさかこんなお返しされるなんてな────。
「ありがとな、お前ら。今までで一番嬉しいよ」
「…羽奏、今の撮った?」
「ばっちり。ちゃんと動画で撮ったよ」
「は?おい消せ」
「たった今クラスのグループに送っちゃいました」
「三崎!!!!!!」
────数時間後
「じゃ、お前ら元気でやれよ」
「みかちゃんこそ元気でなー!」
「先生、今度普通に遊びましょうね」
「お邪魔しました〜」
彼らの姿が見えなくなるまで見送り職員室へ戻ると川崎先生が笑顔で俺のことを待ち構えていた。
「実は卒業前から計画されてたんですよ。私は場所の確保だけ協力して他は全部彼らです」
「全て知ってたんですね。ありがとうございます、いろいろと」
「いいんですよ!…それよりこれで終わりだと思ってないですよね?」
川崎先生がそう言うと後ろから村山先生と北乃先生がやってきてニヤニヤしながらこちらを見てくる。ああそういうことか。
どうやら俺の誕生日パーティーはまだ終わらないみたいだ────。
2022.03.20
『桐ヶ谷帝にお返しを』
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