「さみーーーーーー！！！！！けどめっちゃいい！！！！」
「羽奏も来いよーーーー！！！」
「こんな朝早くから男3人で海に来るなんて…」



それはまだ朝日が昇る前のこと。優輝と樹と僕のグループチャットに着信が入った。かけ間違いかと思って最初は無視していたが何度もかかってくるので5回目あたりで少々不機嫌気味に出ると樹が「出かけんぞ！」と元気に言って切れてしまった。一体何なんだと思っていると再び着信が入り今度は優輝が出た。どうやら卒業前に思い出作りをしたいって樹が言い出したみたいで今に至るというわけだ。



「卒業式が終わってからでもよかったんじゃないの？」
「それも思ったんだけどさ〜神田は引っ越しがあるし羽奏も忙しそうだし…って考えたら今しかねえな〜って思って」
「あとはやっぱり羽奏の誕生日祝いたいしね」



そう言われて今日が自分の誕生日だということを思い出す。そうかもうそんな日だったか。自分のことに無頓着なこともあって誕生日はいつも過ぎてから思い出す。それにこうして誰かに祝われるのは不思議な感じだ。



「それにしたって何で海なの？もっと他にもあるでしょ。たとえば温泉とか、テーマパークとかさ」



僕が樹に尋ねると「テレビでここの海鮮丼がうまいって言ってたから」と答える。だからこんなに朝早く呼び出されたわけだ。なんとも樹らしい理由だしそれだけで海に来ようとするフットワークの軽さ…。



「そろそろ時間じゃね？」
「まじ！？おーい羽奏行くぞー！！今日は予定ぎっちりだからちゃんと着いてこいよーー！！！」
「まったく今日は忙しくなりそうだね…。今行くよ！」



＊



『今日は楽しかったよ、ありがとうね』
『また行こうなー！！』
『次はちゃんと予告してから出かけような』



「ふふ…本当だよ」



その日はすぐ眠りにつくのはもったいなくてカメラで撮った今までの写真を見返していた。人が写ってる写真なんてほとんど撮らなかったのにこの一年でそれを塗り替えるくらいに撮っていた。これも全て2人に出会ったからだろうか。
───きっとそうに違いない。



「本当、2人に出会えてよかったよ」



海で撮った3人が写った写真をグループのホーム画面に設定して眠りについた。
いくつになっても一緒にいられることを願って─────。




2022.03.07
『三崎羽奏と大切な二人』