誕生日SS(2021.05〜2022.03)
「川崎先生お誕生日おめでとう!」
「あはは、ありがとうございます!それにしてもこんなお茶会を密かに開いてただなんて…教頭先生には見つからないようにしてくださいね!」
「もちろんその辺はうまくやるわよ。ね、2人とも!」
「バレたら私たち怒られますしね…」
「まあ、共犯者がこれだけいるんだ。大丈夫ですよ」
遡ること数時間前。
私は、とある時間に桐ヶ谷先生に「ある場所に来てほしい」と言われ指示された通りに来るとなんと村山先生と北乃先生がケーキとお茶を用意していたのである。
「川崎先生の誕生日会です」と桐ヶ谷先生が呟きこの状況に納得した。
せっかくの誕生日会だし今日くらいは学年主任の立場を忘れて楽しんでしまおう。
*
あの後、北乃先生が授業の準備で戻ることになったのでそのまま流れで解散した。
教員生活は長いけど勤務時間に誕生日会なんて初めてだったしなんだか大人の青春みたいで楽しかったなあ。
そんな楽しかった時間を思い返しながら仕事をしているとポケットからメッセージを受け取る音が鳴った。私は妻からの着信音は他の人とは変えているのですぐにそれが妻からだということがわかった。
「…!ふふ、今日は早く帰らないといけませんね!」
*
「「せーの!パパ誕生日おめでとう!」」
帰宅すると同時に玄関で私の帰りを待っていた子供たちからお祝いの言葉とハグのプレゼントをもらった。そしてそのままリビングへと手を引かれいわゆるお誕生日席へと案内されパーティーは始まった。
そこからは本当に幸せな時間だった。
食卓には私の好物が並んでいて、食後には子供たちの手作りケーキが運ばれてみんなで分け合って食べた。見た目は少し不恰好だったけれどそれがまた愛おしいのだ。
*
楽しい時間はあっという間に過ぎ、今年の誕生日はもう少しで終わろうとしていた。
後片付けをしていると妻は何かを思い出したかのように急いで自室へ向かい再びリビングへ戻ってきた。
「宏人さん。これ私からの誕生日プレゼント。改めて誕生日おめでとう!」
綺麗にラッピングされたプレゼントの中身は私が気になっていた財布だった。なんで欲しいものがわかったのかと聞くと「私は宏人さんのことなんでも知ってるんだから当然でしょう?」と満足げな顔で答えた。
「ありがとうございます!私は今日世界中の誰よりも幸せ者に違いないですね!」
大切な人たちにたくさんお祝いされた誕生日。
私は今年も幸せな一年を過ごせますね!
2022.02.26
「川崎宏人は誰よりも幸せに違いない」