誕生日SS(2021.05〜2022.03)
「〜♪」
今日は年に一度の俺が主役の日。
いつもより機嫌がよくなるのも当然だ。
あいつら俺のためにお祝いしてくれるかな。
驚く練習しといたほうがいいかな!
やべ〜超楽しみすぎる!
*
「おーっす。ぞの誕生日おめ」
「おはよう。樹おめでとう」
「…おー、2人ともサンキュー」
え、なんか普通じゃない?
なんかもっとあるでしょ。
そんな流れるようなおめでとうじゃなくてさ
もうちょっとテンション高めで来てくれないと。
そうじゃないと俺の用意してた反応消化できないんだけど??
「あのさ、なんかこう…ね?」
「は?何期待してんだよ。まあジュースくらいなら奢ってもいいけど」
「そうだね、僕もお昼くらいなら奢ってあげるよ」
「まじで!?誕生日サイコー!!!…じゃなくて!!!」
え〜もしかして俺が浮かれすぎてただけ?
もういいよ、お前らにとって俺はその程度だったってわけね。
お昼とジュースはありがたくいただくけど。
はあ…あとで茜ちゃんにお祝いしてもらお〜…。
「あ、ぞの荷物持ってやるよ」
「え?なんだよ急に」
「まあまあいいから」
俺は神田に言われるがまま荷物を預けた。
いや持ってくれるなら最初から持ってくれよ。
もう教室まで来ちゃったじゃん。
…あ、わかった!もしかしてこの扉を開けたらみんながクラッカー鳴らしてお祝いしてくれるフラグじゃね!?
たは〜!全ては計画通りってわけね!
じゃあ思う存分楽しませてもらいますよ。
誕生日ってやつをね!!!
ガラッと勢いよく教室の扉が開いた。
───その瞬間だった。
べしゃ
何かが顔に付着したような音とともに俺の視界は白に奪われた。
なんだこれは、と立ち尽くしていると今度はパンッと飛び出すような破裂音が響く。
息つく暇もなく展開が変わる。
一体何が起きているんだ。
するとクラスの誰かが「せーの!」と掛け声をかける。
そして────。
「「「ぞのくん誕生日おめでとう!!」」」
*
「…で、企画したのは誰なわけ?」
パイ投げの洗礼を受けた俺はハッピーな三角帽子と「今日の主役」と書かれたタスキをかけられふんぞりかえっている。
「そりゃ俺に決まってるでしょ!ぞのを一番理解してるのはこの俺だからね!」
「優輝が主体になってみんなで協力したんだ」
そうだと思った。
こんな祝い方を考えるのは神田だと思っていた。
「で、この完璧なサプライズに対する感想はありますか?今日の主役さん!」
「あのなあ…さすがにお前こんなの…」
「「こんなの?」」
「こんなの最高に決まってんじゃん!!」
2021.05.07
「前園樹は祝われたい」
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