巡り合わせたその先に
これは身分の違う二人が偶然に巡り合わせた物語である──
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ここはとある小さな王国。
人と人が支え合い、賑やかな毎日を送っています。
そんな王国に「リア」という一人のメイドがいました。
リアは明るく元気で、人当たりも良く街の人気者でした。
ある日のことです。
リアの雇い主である夫婦の間に亀裂が入ってしまったのです。
重い空気が張り詰める日々に、リアは二人が仲直りできるように祈ることしかできませんでした。
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それから少しの月日が経ちました。
祈りは届かず二人のすれ違いにより、リアは解雇を余儀なくされてしまいます。
荷物をまとめ、お世話になった家を後にしたリアは街の広場へとやってきました。
(身内はいないし、広場の求人も特にないし…。私、この先どうすればいいのかしら…。)
すると彼女の事情を聞きつけた街の人がある紹介状を持ってきます。
そこには「王子専属メイドの募集」と書いてありました。
「こ、こんなもの一体どこで…!」
リアがそう尋ねると「大丈夫、本物だから!」と街の人は言います。
半信半疑ながらも他にあてもないのでリアは紹介状を片手にお城へと向かうのでした。
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お城に着き広間に案内されると、そこには国王様と王子の姿がありました。
聞くと王子が立派な国王になる日までお世話を頼みたいとのこと。
トントン拍子に話が進みリアは今日から王子専属のメイドになりました。
王子の名は「ルイス」
この王国の第一王子です。
ルイスとリアは身分は違えど歳が近いため、まるで友人のような距離で日々を過ごしていました。
それと同時にリアは気づかぬうちにルイスに惹かれていくのでした。
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月日は流れ次第に王子宛にお見合いの手紙が増えてきいました。
写真を見ると美しい方ばかりで王子に勿体無いくらいです。
しかしルイスは「断る」の一点張り。
(一度もお会いにならないで相手の方に失礼だわ!)
リアはついに痺れを切らしました。
「毎回お会いにもならず断り続けて!いつまでもそのような状態ですと国王様も心配なさるのでは?」
その言葉にルイスは少し寂しげな表情を浮かべ答えます。
「実はもう相手は決まっているんだ。…けど前例がないことだから皆が受け入れてくれるだろうか不安で。」
リアはルイスの手を優しく握ると「大丈夫。」と一言呟き、
「きっと受け入れてくれます。一番側で見ていた私が言うんですから。」
と言いました。
ルイスはその言葉に安心したのか「ありがとう。」と呟きその手を握り返します。
これで私は諦めがつく───。
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それから数ヶ月後。
ルイスが国王に即位する日がやってきました。
国民の前でスピーチをするその姿はもう立派な国王様です。
そしてもう一つ。
ルイスの妃となる方の発表の日でもあります。
当日のお楽しみとだけ言われ、相手の方を知っているのはルイスの血縁にあたる方のみ。
全く、せめて私に教えてくださっても良かったのに。
「皆、聞いてほしい。これから妃となる者を発表するが相手は──姫ではない。」
突然のことに一体何事だと辺りは困惑します。
(前例がないと仰っていたのはこういう事だったの!?)
困惑する国民を前にルイスは続けます。
「思えば彼女との巡り合わせは幸運なものだった。出会ってからの日々は、まるで同い年の友人ができたみたいに充実していた。明るく元気で、身分など関係なく気づけば彼女に惹かれていた。きっと皆も納得してくれると思う。」
するとルイスはリアの方を向き手を差し出します。
「リア、貴方と共に歩みたい。私の妃になっていただけますか。」
*
「えー!?ページここまでしかないの!?」
「そのあと二人はどうなったの?」
「そうね…きっと素敵なハッピーエンドじゃないかしら?」
読み聞かせていた絵本を閉じ、呟く彼女の左の薬指にはリングが輝いていたのでした。
巡り合わせたその先に 終
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