第1話
「レインボードラゴンに会いたいんだったな。じゃあついて来いよ。」
少女は海にそってすたすたと歩き始めた。
覇王も無言で後を追う。
すると、どうしたのだろう。
しばらくして少女は突然立ち止まった。
「…なんちって。」
「は?」
振り返ると、悪戯っぽい笑顔を浮かべた少女はぺろりと舌を出した。
「う~ん、いつになったら気付くかなあって思ってたのに。君、意外と鈍いんだな。」
「何を言って……!?」
言いかけて覇王ははっと身構えた。
何故今まで気付かなかったのだろう。
この少女の醸し出す気配は人のそれと大きく異なっていた――かと言って、ユベルの闇とも違えば、ハネクリボーのような円いものでもない。
もっと別の、得体の知れない何か。
「…お前は何者だ?」
それとなく腰の剣に指を這わせながら、覇王は問うた。
少女は変わらず笑みを浮かべていて、一見するとただの人間に見える。
つかつかと少女は覇王に歩み寄った。
「ごめん、騙すつもりじゃなかったんだけど…。なんか案内役と勘違いされてるみたいだったから。」
「止まれ。何者かと聞いている。」
険しい表情の覇王に、少女は呆れたように肩を竦める。
しかしそれもほんの少しのことで、すぐにもとの笑顔に戻った。
「そのレインボー・ドラゴンってのは、私なんだ。」
今度は覇王がまじまじと少女を見つめる番だった。
「…レインボー・ドラゴンの体長は10mはあるはずだ。」
「さぁ。測ったことはないけど、それくらいあったかもな。」
「四枚翼と七つの宝玉はどうした。」
「人間の女の子にそんなものついてたらアンバランスだろ。」
少女は――究極宝玉神の二つ名を持つ竜は、無邪気に首を傾げてみせた。
彼女が闇に属する自分達と相反する光の元に産まれた伝説の竜。
戦争を終結に導く最終兵器。
にわかには信じがたい話だった。
しかし、そうすると彼女の持つ謎めいた気配の説明がつかない。
「ならば証拠はあるのか。」
「証拠?」
「決まっている。竜の姿を見せろ。」
少女はうーん、と顎に人差し指をあてて思案する。
「それは無理だね。」
「…なんだと?」
「だから無理なんだって。」
ルビーと顔を見合わせて、くすくすと笑った。
「私がレインボードラゴンだってのは嘘じゃない。だけどごめんな。竜の姿には戻れないんだ…代わりと言っちゃ何だけど、」
少女は両の掌を合わせる。
すると、その隙間から小さな光の粒が零れ始める。
それは赤や青や緑…七色に光ながら覇王と少女の足元に落ちていく。
少女が光を束ねて空高く投げると、それは小さな虹になり、片端に覇王、もう片端に少女がくる形で空中に留まる。
しばらく瞬いていた虹はやがて薄れていき、ついには大気に溶けていった。
「綺麗だろ?私、得意なんだ。」
少女の声に、ようやく覇王は我に返った。
視線を戻せば、片目を瞑ってみせた少女の顔が目に入ってくる。
「…確かに人ではないな。」
敢えて無感動に言い放つ。
少女がやってみせたことは、噂に聞いていたほど神秘的ではなかったが、決して人にはできない芸当だった。
少女がレインボードラゴンと認めてもいい。
だが。
少女は海にそってすたすたと歩き始めた。
覇王も無言で後を追う。
すると、どうしたのだろう。
しばらくして少女は突然立ち止まった。
「…なんちって。」
「は?」
振り返ると、悪戯っぽい笑顔を浮かべた少女はぺろりと舌を出した。
「う~ん、いつになったら気付くかなあって思ってたのに。君、意外と鈍いんだな。」
「何を言って……!?」
言いかけて覇王ははっと身構えた。
何故今まで気付かなかったのだろう。
この少女の醸し出す気配は人のそれと大きく異なっていた――かと言って、ユベルの闇とも違えば、ハネクリボーのような円いものでもない。
もっと別の、得体の知れない何か。
「…お前は何者だ?」
それとなく腰の剣に指を這わせながら、覇王は問うた。
少女は変わらず笑みを浮かべていて、一見するとただの人間に見える。
つかつかと少女は覇王に歩み寄った。
「ごめん、騙すつもりじゃなかったんだけど…。なんか案内役と勘違いされてるみたいだったから。」
「止まれ。何者かと聞いている。」
険しい表情の覇王に、少女は呆れたように肩を竦める。
しかしそれもほんの少しのことで、すぐにもとの笑顔に戻った。
「そのレインボー・ドラゴンってのは、私なんだ。」
今度は覇王がまじまじと少女を見つめる番だった。
「…レインボー・ドラゴンの体長は10mはあるはずだ。」
「さぁ。測ったことはないけど、それくらいあったかもな。」
「四枚翼と七つの宝玉はどうした。」
「人間の女の子にそんなものついてたらアンバランスだろ。」
少女は――究極宝玉神の二つ名を持つ竜は、無邪気に首を傾げてみせた。
彼女が闇に属する自分達と相反する光の元に産まれた伝説の竜。
戦争を終結に導く最終兵器。
にわかには信じがたい話だった。
しかし、そうすると彼女の持つ謎めいた気配の説明がつかない。
「ならば証拠はあるのか。」
「証拠?」
「決まっている。竜の姿を見せろ。」
少女はうーん、と顎に人差し指をあてて思案する。
「それは無理だね。」
「…なんだと?」
「だから無理なんだって。」
ルビーと顔を見合わせて、くすくすと笑った。
「私がレインボードラゴンだってのは嘘じゃない。だけどごめんな。竜の姿には戻れないんだ…代わりと言っちゃ何だけど、」
少女は両の掌を合わせる。
すると、その隙間から小さな光の粒が零れ始める。
それは赤や青や緑…七色に光ながら覇王と少女の足元に落ちていく。
少女が光を束ねて空高く投げると、それは小さな虹になり、片端に覇王、もう片端に少女がくる形で空中に留まる。
しばらく瞬いていた虹はやがて薄れていき、ついには大気に溶けていった。
「綺麗だろ?私、得意なんだ。」
少女の声に、ようやく覇王は我に返った。
視線を戻せば、片目を瞑ってみせた少女の顔が目に入ってくる。
「…確かに人ではないな。」
敢えて無感動に言い放つ。
少女がやってみせたことは、噂に聞いていたほど神秘的ではなかったが、決して人にはできない芸当だった。
少女がレインボードラゴンと認めてもいい。
だが。
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