戦!セバ ユゼデビ


君が好きだよ。
愛しくて仕方ないんだ。だから君を僕だけのものにしたくて、呪いをかけた。

…これで永遠に、僕のもの。


「デイビッド。」
「どうした、ユーゼフ?」
手を伸ばせば自らすり寄ってくる愛しい君。
これが僕の望んだ結果。
…なのに何故だろう。
何かが違う、何かが足りない。
「…デービッド。」
わざと発音を変えて呼べば、いつもは間置かず入るはずの訂正がない。
彼はにこりと微笑みを浮かべるだけ。
…ああ、これがその結果なのか。

僕だけを愛するようかけた呪いは、機械的な反応しか示してはくれない。
決して僕の言葉に逆らわない。

「君は、僕が好きかい?」
ずきりと胸が痛む。
「ああ、もちろん!」

その言葉も笑顔も所詮偽物でしかない事に。
心が操られた君はもう僕の好きな君ではないんだと、今更気づいても遅すぎるのに。







「お向かいサン?」

聞き慣れた声にがばっと顔を上げる。
視界に入った景色は見慣れたデーデマン家の休憩室で、飛び起きた僕を見て数回瞬きをしたデイビッド君は、無邪気に笑った。

作り物ではない、彼の笑顔に泣きそうになる。
「お向かいサンでも居眠りしたりするんだなー。」
言い終わらないうちに僕は彼に抱きついた。
「おっと…!」
反動で倒れそうになったのを耐えてから、訳も分からないだろうに、デイビッド君は優しく抱き返してくれた。
彼の腕は温かくて、僕はやっとさっきの事は夢だったと心底安心したのだ。

…このままの彼が良い。
このまま、だからこそ愛しいのだ。

「お向かいサン?どうしたんだー?」
まるで子供をあやすようにポンポンと背中を撫でてくる。
その優しさが嬉しくて。
「ユーゼフ様?」
言葉が出てこなくて、返事の代わりにさらにきつくしがみつく。
「…ユーゼフ。」

「…もう少しだけこのままで、いてくれないか。」
何とか声を絞り出す。
デイビッド君は少し考えてから、僕を抱きしめる腕に力を込めた。


このままの君が良い。
だからどうか君よ、ずっと変わらないでいて。
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