戦!セバ ユゼデビ


気が遠くなる程生きているから。
たくさんの、出会った人達は僕を置いていった。
親しくなればなる程その別れは悲しいのだと、身を持って知っている。

なのに、僕は恋をしてしまった。
いつか別れる悲しさを知りながらその存在を愛してしまった。
止められない感情に戸惑ってしまうほど。


…一体誰が予想していただろうね。
「ようお向かいサン!」
用もないのにデーデマン家に足繁く通う。
まず休憩室。
そこを確認して姿がなければ厨房へ。
今日は休憩室に一人、彼はいた。

「やあデビー君。珍しいね、一人かい?」
お向かいの家にやってきたコック。
体も大きくて可愛いとは形容しがたいその彼に。
なぜか僕は惹かれているのだ。
「デイビッド、だ!お向かいサン。」

挨拶代わりのいつもの台詞。
それでも彼はいつだって嫌な顔はしない。
「でも残念だなお向かいサン。今ハニーはヘイヂと戦っている最中だぞ。B君達も連れてかれたし。」
デイビッド君はさっぱりと笑った。
…いつも、こうやって彼のところに顔を出しているのに相変わらず僕はセバスチャンの為に屋敷に来ていると思われている、らしい。

何だか報われないよねえ。
…なんて思ったけれど、顔には出さず会話を続けた。
「だったら君は行かなくて良いのかい。」
「俺は今ちょうど、みんなが休憩に入りそうだからコーヒーを煎れてきたんだ。」

見ると確かに煎れたてらしく湯気のたつコーヒーが彼の手にある。
と、言うかデイビッド君の行動はいつでもマイペースで面白い。
「…何だ?」
笑みが漏れているのを見て彼は首を傾げる。
「何でも。それよりせっかくだしコーヒー貰えるかな。君の煎れたものはおいしいからね。」

これはお世辞でも何でもない、本音。
すると彼はぱっと笑った。
「そう言ってもらえると嬉しいもんだな!」

ああ、そうか。

もしかしたら僕はデイビッド君のこういう所が好きなのかも。
…素直でまっすぐ。
この僕を相手に裏表なく感情を顔に出す。
何だかそれがひどく新鮮で。
向けられる笑みを愛しいと、思ってしまう。
そんなところが可愛いと思えるのかも、しれないね。
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