その他
中学で出会ってからずっと、そのプレーに魅了されていた。
同じ高校でバスケが出来ると知り嬉しかった。
これから、ずっとあの楽しげで自由な姿を見られるのだと思ったから。
けれどいざ高校へ来てみれば、三上は兄に管理された楽しさの欠片もない練習でずっと辛い表情しか浮かべなかった。
…俺ではその表情を和らげる事は出来なかった。
今、楽しそうにプレーするのは俺ではない人間のおかげ。
そう思うと少しばかり悔しくもあるが…。
ザンッ…と、ボールがネットをくぐった。
「…何だ藤堂。抜かれたくせに笑って。」
悔しくもあるが、お前がまた昔のようなバスケをするようになって、本当に嬉しく思えるから。
「良い顔を、するようになった。」
ふ、と笑って俺は言った。
三上は一瞬驚いたようだったがまたすぐに笑う。
「…感謝している。」
「何がだ。」
「今まで余裕がなくて気づけなかった。いつも藤堂は俺を気にかけてくれていたのにな。」
一番のライバルであり仲間。
誰より大切な。
お前はもう、大丈夫だろう。
「謝罪の言葉などいらないさ。」
「ああ。この恩は試合で返す。」
真っ直ぐ射ぬくような、未来を見据えた瞳。
頼もしい、言葉。
その姿は昔よりもよほど俺を魅了する。
お前のプレーに、お前自身に惹かれ続ける。
出来るならどうかこれからも、真っ直ぐにバスケを愛するお前で。
それでも、もしもまた辛そうにプレーをする時があるなら今度こそ、お前を救うのは自分でありたい。
そう思った。
本当に楽しそうに、自由にプレーする奴だと思った。
バスケットが好きで仕方ないと体中で表現しているその姿に、いつの間にか夢中になっていた。
集合時間よりだいぶ早く体育館に到着したが、そこにはすでに一人先客がいた。
ドリブルの音が響く。
そしてシュート。
ボールは綺麗な音をたててゴールに吸い込まれていく。
ただ無心に練習を繰り返す様子を、しばらく眺めていた。
「…!藤堂、早いな。見ていたなら声を掛けてくれたら良いのに。」
ガアン、とリングにぶつかったボールは俺の足元に転がってきて、眺めていたのが見つかってしまう。
けれどこちらを見る、その表情はやはり楽しそうで。
「三上、一勝負しないか」
ボールを拾い上げて提案する。
今までの三上なら、勝負などくだらないと即座に断っていただろう。
「ああ、構わない。」
三上は笑った。