花柳 相+野


「…村、野村。」
相馬の声が聞こえて意識が浮上する。
目を開けると俺の肩を揺すっていた相馬が安心したように息をはいた。
「ひどくうなされていたぞ。悪い夢でも見ていたのか?」
「あー…。」
目覚める直前まで見ていたものを思い返す。
確かにあれは、悪い夢だ。
「…大きな雪だるまが襲ってきてさあ!」
だからってわざわざ内容を話して心配させたくはないから適当な話を作って聞かせる。
すぐに相馬は呆れたような顔をしたから、きっと俺の話を信じてくれたんだろう。
こういうとき、自分がこんな性格でよかったと思える。

「今日は作戦決行の日だというのに緊張感のない…。」
「さすがに夢の中身まで選べないって俺だって!」
と、おちゃらけてみるけど本当は違う。
しっかりと作戦をしてる夢を見た。
そして自分の最期を。
ただの夢だと分かってるけどその一言で片付けるには現実感がありすぎた。
「…俺、死ぬのかな。」
でもまあ、夢の中みたいに笑って死ねるなら――悪くはないかな。
5/6ページ
スキ