花柳 相+野
「みんな、暖かくなってきて雪がとけて喜んでるけどさ、俺は雪ある方が良いと思うんだよね。」
「敵が攻めてこないからか?」
「いや、雪で色々遊べて楽しいだろ?」
「…野村。」
「何だよ、相馬だって一緒に遊んだじゃん。」
「あれはお前が無理やりつき合わせたんだ。」
「楽しかっただろ!」
「俺たちは何も、雪遊びのために蝦夷に来たわけじゃ…。」
「あーあ。もう一回どかっと雪降らないかなあ。」
「野村!」
「相馬、外!外見てみろ!」
どこか興奮したような口調の野村の言葉に、仕方なく顔を外に向けた。
「…。」
「真横に雪が吹雪いてるぜ!」
…何となく、こういう大したことのない話だろうと予想していたとはいえ。
ただ外で視界を遮るくらい吹雪いているだけだ。
この蝦夷地に来てからは何度となく見た光景。
「何がそんなに嬉しいんだ、お前は。」
「いや別に嬉しくはないんだけどさ。」
「しかし先日は雪が降ってほしいようなことを言っていただろう。」
「ああ、あれは休みだったからさあ。今日はこの後巡察に出ないといけないから、雪は降らないでほしかったかな。」
…全く。
のんきというか、気楽だというか。
まあ確かに、もう春だろうというのにこの地ではまだこんなに雪が降るものなのか…と、再び外に視線をやる。
「あ、巡察のとき寒いからくっついて歩こうぜ!」
「…は?」
いきなりの言葉に驚いて野村を見ると、うきうきとした様子でもう何を言っても聞く耳を持たなそうだった。
「あー、何か楽しみになってきた。やっぱ雪って良いな!」
全く。
緊張感のない笑顔に、ため息しか出なかった。