幕恋 芹鈴
「芹沢さんは、そんなにお酒がお好きなんですか?」
新選組で唯一の女である桜庭が、興味津々といった様子で聞いてきた。
最近はこいつに酒を持ってこさせていたし、今も酒瓶を俺に差し出しているから俺がどれほど飲んでいるのかは容易に察することが出来るのだろう。
「別に好きなわけじゃねえ。」
そう言いながら俺は酒をあおぐ。
「え?」
「それでも飲まなければ気が済まないときがあるんだ。…お前もいつか分かる。」
俺をまっすぐに見つめる曇りのない意志の強い瞳。
桜庭は言葉の意味を理解出来ないのか、わずかに首を傾げた。
その姿を見て自分の発言を思い直す。
「いや、お前には分からないか…。」
分からない、方が良い。
こんな酒の味など知らないままの方が。
お前はそのまま。
まっすぐに己の信念を貫き歩けば良い。
…現実から逃げ出したいなんて、弱い心など持ってはならないのだ。