S◇ 宮白


じりじり、と太陽が肌を焼く。
初めて空に太陽を見たときは感動したものだが、これほどの暑さは勘弁してほしいかもしれない。
なんて、比較的どうでもいいことを考えながら、目の前であーとかうーとか言い続けてる白琵に視線を向ける。
かれこれ十分はこのままだ。
「白琵、どうした?」
「だから、ちょっと待てと言ってるだろ!」
この会話も何回目だっけ?
仕方なしに、俯いてる白琵を観察する。
…あ、まつげ長いな。
何を言い悩んでるのか知らないが、ふるふるとまつげが揺れている。
さらりと髪が風になびく。
普段こんなじっくり見てたら文句が降ってくるから、眺められるのは貴重だ。
ほんと白琵って綺麗だよな。
「わっ、な…何だよ…。」
「え?」
言われて、自分の手が白琵の頬に触れていることに気づいた。
…ちゃんとその顔見たいと思っただけ、のつもりだったんだけど。
「いや…お前なかなか話切り出さないから。」
自分でも驚いたせいで言い訳になってないような言い訳をしてしまう。
それでも白琵は、うっと言葉を詰まらせて。
ついに俺をまっすぐに見た。
「み…宮…。」
「…え?」
名前を呼ばれたのは初めてだった。
不意打ちだろこれ。
かあっと体が熱くなる。
予想外すぎて反応がとれないでいると、白琵はくるりと踵を返した。
「って、用件は?!」
「これだけだ悪いか、ばか!」
反射的に腕を掴んで引き留めると白琵は真っ赤な顔で怒鳴ってきた。
…一連の言動は俺の名前を呼ぶためだったのか。
何だよ、可愛すぎるだろお前。
伏せた白琵のまつげが震えてる。
…くらくらする。
いや、ぐらぐらしてる。
これは果たして暑さだけのせいなのか。
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