幕恋 大鈴


あなたと私では価値観が違いすぎる。

「それが何だって言うんだい。」
けれどあなたは私の悩みなど意に介さないように冷たい笑みを浮かべるのだ。
私は一瞬言葉を詰まらせながらも、口を開く。
「…つまり、それは同じものを共有する事は出来ないということです。」
「ふうん。…それで?」
大石さんは笑顔のまま私の言葉を待った。

「一緒にいるのに同じものが見えないのは…とても悲しいです。」
いつだって同じ感情を共有する事が出来ない。
例えば、昇る朝日は美しいとか。
道端に咲く花は可憐で力強いとか。
…全てを同じく感じたいなんて無理は言わないけれど、大石さんとは当たり前の感情すらきっと。

全く正反対で決して近づく事はない。
ただただ、その現実を思い知らされるだけ。

「そうかなあ…。」
くく、と大石さんは口元をつり上げた。
「俺は楽しいけれど、ねえ?」


ほら、私達はまるで正反対。
いつまでたっても平行線のまま。

同じもの、違うもの
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