戦!セバ その他
塞いだ耳で聞いたのは(ユゼB)
「ねえBくん。」
後方からオレを呼ぶ、心地良い悪魔の声がする。
絶対振り返ったら駄目だ!
それでなくてもオレは今、屋敷の中をひたすら歩き回っているのだから。
後方の、ユーゼフ様がオレの後を一定の距離を開けながらついてくるからで、だからといって立ち止まれば最後…ユーゼフ様に捕まってしまうだろう。
それが怖くてひたすらに歩き続けている。
「僕は可愛いものが好きでねえ。」
相変わらず距離を保ったままユーゼフ様はオレに話しかける。
「最近は寝ても覚めても君のことばかり考えるんだよ。」
ずいぶん恐ろしい言葉が聞こえる。
もうそれ以上聞きたくなくて耳を塞いだけど。
『これって恋なのかな?』
「ぎゃっ!」
今までで一番近く、一番はっきりとした声。
でも耳元で言われたわけじゃない。
え、何これ。
『頭に直接話しかけているんだよ。残念だけど耳を塞いだだけじゃ僕の声を遮れはしないよ?』
…この行為が無意味だと悟ってオレは両手を下ろすしかなかった。
なんだ、意外にかわいいやつなんだな(セバデビ)
初対面でゲイだ惚れたと騒がれたときは何だこの男、と思ったものだが。
「デイビッド。」
「ようハニー!」
厨房へ寄ると、途端に嬉しそうな顔をして俺に近づいてくる。
犬なら尻尾がはちきれそうに振られているだろう。
まあでも…わざわざ見えない尻尾を想像するまでもないか。
俺に向けるこの表情が全てを語っている。
真っ直ぐに向けられる大きくて優しい好意。
それを嫌だと感じる人間などいないだろう。
最後の反抗――それは悪あがき(ユゼセバ)
「あなたなんて嫌いです。」
「へえ?」
「瘴気をまき散らすし、どこへでも壁をすり抜けて現れるし、闇の世界の住人だし。」
「それで?」
「何でも見透かしてるようなその顔がすごくむかつきます…!」
本当にどうして俺はこんな相手に惹かれてしまったのか。
嫌いなところをこれでもかとあげ続けても、目の前の笑顔は崩れなくてそれがまたどうしようもなくむかつく。
なのに嫌いになれない自分が一番むかつく。