戦!セバ ユゼデビ


いつも気がつけば向かいの屋敷の厨房へと足が向かっている。

「よう、お向かいサン。今日も来たなー。」
いつも笑顔で迎えてくれる彼に会いたくて。
「やあデビッド君。」
「デイビッド!…で、コーヒー飲むか?」
「うーん、今日は紅茶をもらおうかな。」

毎日毎日、それを口実に訪ねているせいか僕から言わなくても用意してくれるようになった。
進歩って言えるのかは微妙だけど。
「よしじゃあ昨日買ったばかりの新茶を淹れてやるな!」
そうして、僕のためだけにお茶を淹れてくれる姿が嬉しい。

「お待たせ。」
「ありがとう。」
ティーカップを受け取り向かいに座るデイビッド君を見やる。
この穏やかな時間が好きだった。
「それにしてもお向かいサン、毎日来るけど暇なのか?」
無邪気に首を傾げる彼は全く深読みというものを知らないらしい。
「迷惑かい?」
「いや、俺はこうして話し相手が出来て嬉しいんだけどさ。」

暇といえばそうだけど。
暇な時間を作ってまでここに通うのは君に会いたいからなんだよ。
なんて言ってみてもきっと、冗談だと笑い飛ばされるのが関の山だろうけど。

「君に会いに来ているんだよ。」
さり気なく本音を伝えてみると、一瞬きょとんとしたあと笑われてしまった。
「そんなに俺の淹れるお茶はうまいか?」
…何とも斬新な解釈だ。

本当にもう。
早く気づけばいい。
僕が君の手のあくころにいつも来る理由を。
他の使用人のにいない時間を見計らって来る理由を。
短い時間だとしても厨房で、

ふたりきり
(その、意味を)
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