S◇ その他


『金隷。』
名を呼ばれ皇子を見ると、彼は両手をこちらに差し出していた。
「はい、皇子。」
皇子が何を望んでいるのか理解して苦笑いが浮かぶ。
背に腕を回すと、彼も自らの腕を私の首に回した。
皇子は最近、抱きかかえられるのがお好きらしい。

『お前の腕の中は心地が良いな。』
抱えて歩いていると、ふと皇子が呟く。
もう一切私を警戒していないし、目を閉じて無防備ですらある。
こんな姿を見られるのも、こんな言葉をかけられるのも自分だけ。
これは独占、なのか征服なのか。
…私もですよ、皇子。
あなたを腕に捕らえるこの瞬間が心地良く感じて、とても好きなのだから。
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