S◇ 主灯


「俺は多分、最後まで立っていない。」
一灯は真面目な顔で言った。
「でもお前は立ち止まっちゃだめだ。俺が倒れても進め。ラカンと千銀を守れるのは灯二だけだからな。」
「一灯…。」
千艸の血を飲んだだけの一灯や他のみんなは、いつまでその血が効いているかわからない。
全てがおわるまで保つのが一番だけど、そうならなかったら。
きっとラカンとチグサと、最後まで一緒にいられるのはおれだけ。
「うん。…そうなったら、一灯の分まで死ぬ気で二人を守る。」
倒れた一灯を、みんなを残して進むのはつらいけど。
全部終わらせるために、進まなきゃいけないんだ。

「ああ。でも、本当に死んだら許さないからな。」
ぎゅっと、一灯はおれをだきしめた。
止まることの出来ないこの先のことを考えると、不安だらけだけど。
一灯の腕の中は安心できる。
…昔は役に立てるなら命を捨てたって良かった。
でも、今は違う。
こうしておれを必要としてくれる人がいるから役に立ちたいと思う。
だからこそ、生きたいと思うんだ。
「全部終わったときにはおれは、一灯の隣にいるよ。」
「ああ。」
おれをだく腕に力がこもる。
ぜったいにぜったいに。
おれは戻ってくるから。
そのために、進むんだ。
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