S◇ その他


いらいらする。
むかむかする。
今の気分を何て表現すれば良いのか、自分の知っている単語では見つからない。



皇子たちと合流してからずっと、主匪は弟を構ってばかりだ。
俺にも兄弟がいたがあんなに心を砕こうと思える相手じゃなかったから、仲良くしてる二人を見るのは不思議な感じだし羨ましくもある。
…ついでにいらいら、むかむかしてくる。

「宮、どうかしたのか?」
心配そうな表情を浮かべて主匪が近づいてきた。
何とも言えない感情に支配されてる俺はちらりと視線を向けて、適当に答える。
「別に。」
全く俺らしくない。
大人気もない。
「別にって言う割にはお前…。」
「うるせえな、さっさと弟のとこ戻れよ!」

無意識に高ぶって、言ってしまってからやっと気づく。
この気持ちは、嫉妬だ。
弟ばかり構う主匪が面白くなかった。
主匪の弟相手に嫉妬だなんて情けなさすぎるけど、気づかなかっただけで俺の中で主匪はいつの間にか、こんなに大きな存在になってたって事か。

「宮の調子が戻るまではここにいるぞ。」
「…しばらく直んねえよ」
「なら、しばらくいるから。」
いらいらもむかむかも、名前を変えて俺の中にずっとあり続けるのだろう。

「ずっと直んねえよ…。馬鹿。」
でも今だけは子供みたいな駄々をこねて。
こうしてお前を独り占めにする。
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