戦!セバ ユゼB
先日迷惑をかけてしまったお詫びにと、オレは厨房で届いたばかりのミントチョコアイスをデイビッドさんと食べることにした。
「本当にB君はアイスが好きだよねえ。」
「ぎゃっ!」
器に盛られたアイスをおいしく食べていたら、いつの間にかユーゼフ様が向かい側に座っているから。
驚いてデイビッドさんにしがみついた。
この神出鬼没を何とかしてくれよ!
ユーゼフ様はいつものように笑顔だ。
今日は瘴気を出してなくて、だからこの近さでもデイビッドさんがいるし耐えられる、気がする。
「別に…好きと言うほどでもないんですけど。」
「B君よ。半月にミントチョコ6リットル食べながら好きじゃないって無理あるぞう?」
デイビッドさんにつっこまれてしまった。
あー…まあ確かにオレはアイスはミントチョコが一番好きだけど、いつも3箱ミントチョコにしているのは好きって他に理由がある。
「…昔、落としてしまったアイスをこう、ぱっと元に戻してもらったことがあって。子供だったオレは魔法を見た気がしたんですよ。今にして思えば手品だったのかもしれませんけど、もう一度見たいなと思ってつい食べてしまうんです。」
うん、あれは本当に魔法だと思ったんだ。
あれから、ずっとミントチョコアイスがすごく特別になるくらいにはオレには衝撃的だった。
アイスに夢中でその魔法を使った人のことは全く記憶になかったけど。
ふとユーゼフ様を見ると、複雑な表情を浮かべていた。
「どうしたんだお向かいサン?」
「…覚えていたんだね。」
ユーゼフ様はふいに、もうほとんど残っていないオレの器に手をかざした。
次の瞬間。
食べる前と同じ姿のミントチョコアイスが器に乗っていた。
「…!」
…えーとこれってつまり。
あのとき出会ったのはユーゼフ様だった…?
「そんなに君の記憶に残っていたなら、あのとき家に連れ帰ったらよかった。」
ふう、とため息をつくユーゼフ様。
え、何?オレそんなやばい状況下にいたのか?
「しかもそのとき君を連れ去ったのは、何の因果かデイブ君だしねえ。」
覚えてないけどありがとうございますデイビッドさん!
「デイビッド!あー、そういや昔すごい危険を感じる相手に会った記憶があるなあ。」
デイビッドさんはのんびりと笑った。
「なんか昔も今と変わらないな!」
…確かにいつもユーゼフ様関係でデイビッドさんに助けられてる、ってことになるよな。
しかしこんなことを本人の前で言えるのはデイビッドさんくらいだと思う。
でもユーゼフ様は気にする風でもなく、むしろ嬉しそうに頷いた。
「え?」
「だって、昔も今も変わらずB君は僕のこと好きだろう?」
「は?何で…!」
昔も、もちろん今も別に好きなんかじゃないし!
と、言いかけたところで今まで本当に忘れていたのに思い出してしまった。
見上げた先にあった、あの優しい魔法使いの笑顔を。
――ああオレは。
ずっと昔から、焦がれ続けていたものは。