戦!セバ セバB


「はあ…。」
「どうかしたのか、B。」
廊下を歩きながら思わずため息をこぼすと、ちょうど通りかかったセバスチャンに聞かれてしまった。
「いえ、あの…。」
思いきり私事の悩みだったので言うのがためらわれたけれど。
言ってみろ、と促されて口を開く。

「この間、ユーゼフ様に連れ戻してもらったとき…オレ、あまり覚えてないんですけどローンで助けてもらったらしくて。その返済のことを考えるとどうしたら良いのかと…。」
「そんなことか。あの人の戯れ言なんて無視しておけば良い。」
セバスチャンはあっさりとオレの悩みを切り捨てた。
あなたじゃないんだから、そんな恐ろしいこと出来ませんよ…!
「戯れ言とは、またひどい言いようだねえセバスチャン。」
突然背後に瘴気を感じて、オレはとっさにセバスチャンにしがみついた。
「戯れ言以外の何物でもないでしょう、ユーゼフ様。あなたに会うたびこんな調子のBに一体何をさせる気ですか?」
「うーん、まあそうなんだけどねえ。」
二人の会話は耳に入ってくるけれど、オレは恐ろしくて顔を上げることも出来ない。

「じゃあ今回は、セバスチャンに貸しってことで。」
ええ、何でそんなことに!
「はあ…まあ、良いでしょう。」
しかもセバスチャン、良いんですか?!
「ふふ、君に恩を売っておくのも悪くないね。それじゃあ僕はこれで。」
ユーゼフ様がいなくなってから、そっと顔を上げる。
セバスチャンは特に怒っている様子ではなかったけど。
オレのせいでユーゼフ様に貸しなんて作らせてしまったのだ。
「セバスチャン、すみませんでした…。」
「気にするな。これでお前はもうため息つかなくてすむんだろう?」
ぽん、と頭を撫でてセバスチャンは歩き出す。
「あ、あの!オレ何か出来ることありませんか?」
いつもセバスチャンに頼って、助けてもらって。
今回はオレの負うべきものまで負わせてしまったのだ。
すでに返せないほどたくさんの借りがあるけれど、少しでも返したかった。

「…お前が傍で笑っていてくれれば、それで十分だ。」
ふわり、優しい笑顔で。
セバスチャンは言った。
…そんな顔、反則だ。
見とれてしまって何も言えなくなる。
あなたが笑ってくれるからオレも笑顔になれるのに。
あなたの傍に、いたいと思うのはオレの望みなのに。
これじゃあ借りなんて、全く返せないじゃないか。
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