戦!セバ ユゼB
「おはようB君。」
今日も突然ユーゼフ様はオレの前に現れる。
…っていうか、今壁から出てきたよな。
それすらもう日常と化していて驚くことはないけれど。
「今日も可愛いね君は。」
「ユーゼフ様…。」
「好きだよ。」
ユーゼフ様は後ろから優しくオレを抱きしめて耳元で甘くささやく。
これは毎日言われていたとしても慣れることが出来ない。
この人に与えられる言葉一つがこんなにも嬉しくて顔が赤くなるのだ。
好きだよ、なんてどうしてユーゼフ様は毎日恥ずかしげもなく言えるんだろう。
オレにはその二文字はそう簡単に言えはしないから。
「…オレは嫌いです。」
ぽつりと呟く。
この一言にだって、勇気を振り絞ってるんだと伝わるだろうか。
「…ふふっ。」
耳元でユーゼフ様が笑う声がする。
「せっかくの告白は嬉しいけれど、どうせなら今日じゃない日に聞きたいな。」
今日は、エイプリルフール。
だからこそ言える精一杯の言葉だった。
「…ムリです。」
今でさえこんなに心臓がばくばく言ってるんだから好きだなんて、口にする前にきっと倒れる、オレ。
「仕方ない、今日はそれで許してあげる。ねえ、B君。だからこっちを向いてもう一度言って。」
ユーゼフ様の腕が緩み、オレはおずおずと後ろを振り返る。
優しい眼差し。
目が合った、それだけで嬉しそうに細められる。
心臓は早鐘のように鳴り続けているし、オレの顔だってきっと赤いままだろうし恥ずかしさだってちっとも消えてない。
「やっぱり、もう無理です!」
「おや、残念。」
だって言葉が違うだけでこれは確かに告白だ。
ユーゼフ様があんまり嬉しそうに笑って待ってるから、余計に恥ずかしくなるんだよ。
「まあ良いさ。君が僕の腕の中にいてくれれば十分だ。」
そう言ってユーゼフ様は笑う。
甘やかされてるって分かっていながら、そのまま甘えてしまう。
素直になるにはもう少し時間が掛かりそうだ。