戦!セバ ユゼデビ



「明日はクリスマスイブだな、お向かいサン!」
「そうだねえ…。」

うきうきと話しかけてみれば、何とも興味の無さそうな返事が。
うーん、まあでも何かちょっと分かるというか。
「お向かいサンほど聖夜が似合わないやつもいないもんなー。」
もしかして本当にそんな理由で興味ないとしたらもったいないのにな。
イベントに踊らされてるとはいえ、やっぱりみんなが嬉しそうにしていれば嬉しくなるし。
だからお向かいサンにも笑ってほしいんだけど。

「…そういう君はずいぶん楽しそうだね。」
俺の言葉を聞き流し、お向かいサンは問いかけてきた。
「それ、明日の仕込みだろう?だいぶ力入ってるじゃないか。」
今まで話しながらも手だけは止めずに明日の準備をしていたのを、当然のように突っ込まれてしまった。
確かに普段より手間ひまかけてる。
どうせならおいしい料理を食べてもらいたい。

食べてもらいたい、人がいるから。
「お向かいサン、明日一緒にクリスマス祝わないか?」
「何だい、突然。」
ここまで力入れて料理を作るのは、お向かいサンに食べてほしいからなのにさ。
いつもはムダに鋭いくせに、そんなことにも気づかないのか。

「聖なる日は、体調が良くなくてねえ。」
困ったような口調は冗談ではないと言っている。
さっき俺が言った言葉はあながち的外れじゃなかったらしい。
だけど、俺はぱっと笑った。
「俺と一緒なら、きっと聖夜を祝えるぞう?」
「僕の気を中和するとでも?」
「その通り!」

なんて。
本当はただ、一緒に過ごしたいための言い訳だ。
「お向かいサンには特別ディナー、用意してやるな!」
困惑気味だったお向かいサンの表情が和らいだ。
「…そうだね。こんなに気合いを入れて用意してくれてるんだし。」
ふふ、といつもの調子に戻って笑う。
「でもクリスマスに予定を入れるなんて何年ぶりかな。」

それなら俺もだ。
今までは皆に料理をふるまうくらいしか楽しみがなかった俺が、それ以外でこんなにクリスマスが待ち遠しいなんて。
誰かと一緒に過ごしたいと思うなんて。

「楽しみにしてるよ。」
「任せとけ、お向かいサン!」
笑顔を向けてくれたお向かいサンを見れたのが、とても嬉しくて。
明日がますます楽しみになった。
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