大人の対応

 主様が大事な話があるというので執事たちは全員食堂に集められた。みんな何事かとざわめいていたけれど、主様がやってきて静寂が訪れた。
 主様は全員を見渡すと、めずらしく緊張しているのか、ピンクの小花柄の白いスカートを両手で握りしめている。
「あのね、」
 口を開いたけれど、はくはくと開いたり閉じたりするだけで言葉にならないようだ。

 その様子を見て、俺は例の青年とのことだな、と勘づいてしまった。

 おそらくここにいる執事たちもあらかた気づいているのかもしれない。そのくらいふたりの関係はオープンで、彼も何度か屋敷にパイを持って遊びにきていた。
「えっとね、」
 主様の額にはうっすらと汗が浮かんでいる。
 うーん、どうしよう……。
 するとルカスさんが一歩前に出た。
 「主様、具合が悪そうなのでお話はまた次の機会にしませんか?」
 そう言うと、さっと主様を横抱きにした。
「ベリアン、カモミールティーを淹れてくれるかな? アモンくんも今が一番見頃な花を採ってきて」
 テキパキと指示を出したルカスさんは、腕の中の主様に向かって微笑みかけた。
 何でもないフリをできるルカスさんはやはり大人なんだ……それに比べて俺は何もできていないな……。
 運ばれていく主様を見送って、ルカスさんと俺とを比べて、また凹んでしまうのだった。
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