大事な大事な軌道修正

「主様」と呼べば満開に咲いたひまわりを思わせる笑顔ではしゃいでいらっしゃった。その様は屋敷中を明るくしていて、執事たちも喜んで主様中心の日々を送っていた。
 だから、その誤りに気づくのが遅れた……というのは言い訳にしかならないかもしれない。

 主様が喃語を卒業して半年ほど経った頃、自分のことを「あるじしゃま」と言い出したのだ。一人称が主様というのは、さすがにいけない気がした。亡くなった前の主様は「✳︎✳︎✳︎」と名付けられていたこともあり、その日のうちに全執事に主様のことを「✳︎✳︎✳︎様」と呼ぶように申し送りがされた。4歳の頃には一人称「✳︎✳︎✳︎さま」になり、最後の「さま」を完全に取るまでに半年近くかかった。

 6歳の今となっては自分の名前は「✳︎✳︎✳︎」だと理解されているし、一人称は「私」と発言されているし、自分のことを「主様」と呼ぶのは執事だけだということも理解なさっているが……。
 ……そんなこともあったなぁ、と懐かしく思いながら俺は日記を閉じた。
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