主様のこいびと 〜過去作再録集〜
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狭い居室の小さなテーブルの上に、ほかほかと湯気を立ち昇らせるマグカップをふたつ置けば、座布団の上でフェネスは大きな身体を猫背気味に縮こませた。
「主様に給仕をさせるなんて、俺は執事失格です」
しゅんとする顔にきゅんとする。
「私がやりたくてやってることだから気にしないで。ベリアンやフェネスみたいに上手くないし、茶葉もちゃんとしたリーフティーやティーバッグじゃなくてお茶パックだし。でも最大限に愛情を込めて淹れたからどうぞ」
「ですが」
食い下がってくるフェネスに私は口を開く。
「それとも何? 私の淹れた紅茶が飲めないとでも言うの?」
これではお酒の席で絡む酔っ払いではないか。自分の言葉選びのセンスを呪っていると彼はおずおずとカップを手にして口元に運んだ。
「……いただきます……あれ? これはフルーツティー? 何の香りだろ?」
スンスン鼻を鳴らして、それからひと口。すると花が綻ぶように頬を緩めた。
「美味しいです、主様!」
先ほどまでの不安そうな表情が消えるのを見て、私もほっとする。褒めてくれたことに「ありがとう」と言いながらカーペットの上に直座りすれば彼は慌てふためく。でも、
「いいのいいの、気にしないで」
と制して私もカップに口をつけた。
「これはマルコポーロってフレーバードティーよ。私のとっておき。いつかフェネスにも飲んでもらいたいなーって思ってたから丁度よかった。でも……」
言い淀む私に「でも?」とおうむ返し。
「うーん、香りは誤魔化せても、味を最大限に引き出す腕はやっぱりフェネスに負けるわね」
「そんなことは……」
彼の謙遜に、私は被せ気味に口を開く。
「そんなことあるのよ。これでもあなたたちのおかげでずいぶん舌が肥えたんだから。味の違いは私でもよく分かるわ。
——それよりも」
ずい、と身体を乗り出せばその分だけ彼は背筋を伸ばした。
「主様に給仕をさせるなんて、俺は執事失格です」
しゅんとする顔にきゅんとする。
「私がやりたくてやってることだから気にしないで。ベリアンやフェネスみたいに上手くないし、茶葉もちゃんとしたリーフティーやティーバッグじゃなくてお茶パックだし。でも最大限に愛情を込めて淹れたからどうぞ」
「ですが」
食い下がってくるフェネスに私は口を開く。
「それとも何? 私の淹れた紅茶が飲めないとでも言うの?」
これではお酒の席で絡む酔っ払いではないか。自分の言葉選びのセンスを呪っていると彼はおずおずとカップを手にして口元に運んだ。
「……いただきます……あれ? これはフルーツティー? 何の香りだろ?」
スンスン鼻を鳴らして、それからひと口。すると花が綻ぶように頬を緩めた。
「美味しいです、主様!」
先ほどまでの不安そうな表情が消えるのを見て、私もほっとする。褒めてくれたことに「ありがとう」と言いながらカーペットの上に直座りすれば彼は慌てふためく。でも、
「いいのいいの、気にしないで」
と制して私もカップに口をつけた。
「これはマルコポーロってフレーバードティーよ。私のとっておき。いつかフェネスにも飲んでもらいたいなーって思ってたから丁度よかった。でも……」
言い淀む私に「でも?」とおうむ返し。
「うーん、香りは誤魔化せても、味を最大限に引き出す腕はやっぱりフェネスに負けるわね」
「そんなことは……」
彼の謙遜に、私は被せ気味に口を開く。
「そんなことあるのよ。これでもあなたたちのおかげでずいぶん舌が肥えたんだから。味の違いは私でもよく分かるわ。
——それよりも」
ずい、と身体を乗り出せばその分だけ彼は背筋を伸ばした。