読み、終えて……しま……った。
　主人公に感情移入して一気に読んでしまった。
　心臓がバクバクと鼓動を打っていて、頬も熱い。

　子供の頃から家族の影響で読むのは歴史書が多い。ボスキが隻腕になってからというもの医学書や人間工学の本も読み漁っているし、息抜きにストーリー性のあるものを選ぶこともよくある。
　その俺が、まさかこういうジャンルの小説に手を出すことになるとは。人生とは本当に不思議なことが起こるものだと思う。
　主様といるととても楽しい。主様があちらの世界に帰られた後はなんだか寂しくて、ウイスキーを少しだけ飲んで眠りにつくこともあった。
　少なくともこの想いは好意だと気づいてはいた。小さな家で主人公とそのパートナーが慎ましくも微笑ましい暮らしをしている物語が楽しすぎて、もし主様とそういう関係になれたらとても素敵だろうと夢想したこともあるし、その気持ちが溢れ出て主様に打ち明けたことも。その時の戸惑った表情から、もしかしたら俺は困らせてしまったのかと慌てたけれど、次の日も、そのまた次の日も、担当を外されることはなかったのでほっとした。