主様のこいびと 〜過去作再録集〜
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ノックの音にも、かけられた声にも気づかなかった。
瞼の裏に光を感じて、眩しさに布団を引きかぶる。まろやかなテノールが「主様」と爽やかに発声して、夢うつつにそれが誰を示しているのか分からなくて無視していると布団の上からポフポフ叩かれた。
「主様、朝ですよ。起きてください」
……それ、もしかして私のこと?
「今日はお天気もよくて、空気も澄んでいるので絶好の散歩日和です。よかったら朝のお茶の前に少し歩きませんか?」
それから優しく揺さぶれて、意識がだんだんと戻ってくる。この声は……
「フェネス……?」
布団から目だけ出してみる。彼がゴールデンレトリバーであればわっさわっさと尻尾を振っているだろう。でも残念なことに大型犬ではないので、代わりに顔を綻ばせた。
「目が覚めましたか?」
突然この屋敷に主として迎え入れられ、執事たちにかしずかれるようになってから二ヶ月が経とうとしている。今なお主様と呼ばれることに慣れていないけど、私が自ら選んだ担当執事のハンサム具合にはだいぶ目が慣れてきた。
モノクルに阻まれて最初は気づかなかったけれど、長めの下まつげに縁取られた、とろりとしたはちみつ色の瞳、すぐ紅に染まる頬。それに、通った鼻筋に厚ぼったくも軽薄そうにも見えない唇。その唇がこんなちんちくりんな私なんかを構ってくれているのだ。嬉しくないわけがない。
瞼の裏に光を感じて、眩しさに布団を引きかぶる。まろやかなテノールが「主様」と爽やかに発声して、夢うつつにそれが誰を示しているのか分からなくて無視していると布団の上からポフポフ叩かれた。
「主様、朝ですよ。起きてください」
……それ、もしかして私のこと?
「今日はお天気もよくて、空気も澄んでいるので絶好の散歩日和です。よかったら朝のお茶の前に少し歩きませんか?」
それから優しく揺さぶれて、意識がだんだんと戻ってくる。この声は……
「フェネス……?」
布団から目だけ出してみる。彼がゴールデンレトリバーであればわっさわっさと尻尾を振っているだろう。でも残念なことに大型犬ではないので、代わりに顔を綻ばせた。
「目が覚めましたか?」
突然この屋敷に主として迎え入れられ、執事たちにかしずかれるようになってから二ヶ月が経とうとしている。今なお主様と呼ばれることに慣れていないけど、私が自ら選んだ担当執事のハンサム具合にはだいぶ目が慣れてきた。
モノクルに阻まれて最初は気づかなかったけれど、長めの下まつげに縁取られた、とろりとしたはちみつ色の瞳、すぐ紅に染まる頬。それに、通った鼻筋に厚ぼったくも軽薄そうにも見えない唇。その唇がこんなちんちくりんな私なんかを構ってくれているのだ。嬉しくないわけがない。