主様のこいびと 〜過去作再録集〜
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「あ、フェネスさん!」
左右反転された屋敷を散策していると、一階の廊下でムーに声をかけられた。
「ど、どうしたの? ムー」
恐る恐る振り返った。どうやら俺はさっきのボスキの言動で神経が過敏になっているようだ。しかしそんなことお構いなしのムーは——黒猫ではなかった。
白くてスラっとしていて、よく子豚とからかわれている外見とはほど遠い。
「どうしたんですか? 僕の顔をジロジロ見て」
俺の態度に首を傾げているムーだったけど「あ、そうだ!」と何やら思い出したらしい。
「ごはんの準備ができています! フェネスさんを呼んでくるようにハウレスさんから頼まれていたんでした」
なんだ、そういうことか。
で、でも、ボスキみたいにまた違和感を抱かれると嫌だな。そう思っていると信じられないことを白猫ムーが言い出した。
「ふふっ、ハウレスさんのごはん、楽しみだなぁ」
「……え」
あの生活能力がお世辞にもあるとは言えないハウレスが、料理? しかもムーは楽しみにしてる?
「さあさあ、早く行きましょう」
よほど我慢できないらしく、俺を残してムーは駆け出して行った。
食堂に着くとコック服姿のハウレスがキッチンから出てきたところだった。
「遅いぞ、フェネス」
見れば二階の執事は俺以外全員揃っていて、既に食事が始まっている。
ハウレスの左腕には器用にも何枚も皿が乗っていて、狐色のパンケーキが盛り付けられていた。バニラと蜂蜜の香りが鼻腔をくすぐる。
「ご、ごめん、ハウレス」
空いている席に腰を下ろすと目の前に皿が置かれた。念のためにパンケーキを一枚ひっくり返してみたけれどまったくこげていない。
「さあ、冷めないうちに食べてくれ。お代わりもあるからな」
そう言ったハウレスにボスキが「お代わり」と空になった皿を差し出す。
「お前なぁ……そんなに野菜ばっかり食べているとヤギにでもなるぞ」
え?
「俺の血はトマトでできてんだ。ほら、文句を言わずにとっととサラダを寄越せ」
左右反転された屋敷を散策していると、一階の廊下でムーに声をかけられた。
「ど、どうしたの? ムー」
恐る恐る振り返った。どうやら俺はさっきのボスキの言動で神経が過敏になっているようだ。しかしそんなことお構いなしのムーは——黒猫ではなかった。
白くてスラっとしていて、よく子豚とからかわれている外見とはほど遠い。
「どうしたんですか? 僕の顔をジロジロ見て」
俺の態度に首を傾げているムーだったけど「あ、そうだ!」と何やら思い出したらしい。
「ごはんの準備ができています! フェネスさんを呼んでくるようにハウレスさんから頼まれていたんでした」
なんだ、そういうことか。
で、でも、ボスキみたいにまた違和感を抱かれると嫌だな。そう思っていると信じられないことを白猫ムーが言い出した。
「ふふっ、ハウレスさんのごはん、楽しみだなぁ」
「……え」
あの生活能力がお世辞にもあるとは言えないハウレスが、料理? しかもムーは楽しみにしてる?
「さあさあ、早く行きましょう」
よほど我慢できないらしく、俺を残してムーは駆け出して行った。
食堂に着くとコック服姿のハウレスがキッチンから出てきたところだった。
「遅いぞ、フェネス」
見れば二階の執事は俺以外全員揃っていて、既に食事が始まっている。
ハウレスの左腕には器用にも何枚も皿が乗っていて、狐色のパンケーキが盛り付けられていた。バニラと蜂蜜の香りが鼻腔をくすぐる。
「ご、ごめん、ハウレス」
空いている席に腰を下ろすと目の前に皿が置かれた。念のためにパンケーキを一枚ひっくり返してみたけれどまったくこげていない。
「さあ、冷めないうちに食べてくれ。お代わりもあるからな」
そう言ったハウレスにボスキが「お代わり」と空になった皿を差し出す。
「お前なぁ……そんなに野菜ばっかり食べているとヤギにでもなるぞ」
え?
「俺の血はトマトでできてんだ。ほら、文句を言わずにとっととサラダを寄越せ」