タカラモノ
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月日というのは早いもので、主様は先日14歳になられた。生まれたのは本当に最近な気がするけど、それだけ俺が長生きしているということか。
主様は、今日は朝から熱心にデッサンをしている。モデルは俺。うーん、俺なんかよりもっと絵画映えする執事もいると思うのに……たとえばハウレスとか……。
「主様、そろそろ休憩になさいませんか? 頑張りすぎるのはよくありませんよ」
「うーん……あともうちょい……」
「先ほどもそうおっしゃいました。それに、同じ姿勢をずっと続けている俺も疲れました。少し休憩したいです」
最近学んだこと。それは、俺がこういう風に言えば、主様はきちんと休憩してくださるということ。
「うぅぅ……分かった! そこまで言うなら休憩しよう!」
スケッチブックをテーブルにうつ伏せにして置くと盛大に伸びをした主様は、先ほどまで眉間に皺を寄せていたのと同一人物とは思えないほど、あどけない表情を見せている。
「それではお茶をご用意いたしますね。何かご希望はございますか?」
両手を握りしめて伸びをしたまま椅子の背もたれに上半身を預けている主様は、あくびをひとつした。
「ニルギリのアイスミルクティー。ほんのり甘めで」
「フフッ、かしこまりました」
グラスが汗をかき始める頃に部屋の扉をノックしたけれど、反応がない。
どうしたんだろう?
「主様? フェネスです。入りますね」
断りを入れて扉を開けば、主様はまた熱心にスケッチブックと向き合っていた。
「ニルギリのアイスミルクティーです」
「んんー……あともうちょい」
主様、12年前と変わっていないなぁ……。
「アイスミルクティー」
「ん?」
シャッシャッと走っていた鉛筆の音が止まった。
「デッサンは逃げませんが、アイスミルクティーは薄くなってしまいます」
「うぅ……フェネスには敵わないなー」
ふぅ、とため息をついた主様の肩越しに見えたのは、椅子に足を組んで座り、窓の外に視線を投げている俺の姿だ。
まだ主様が2歳だった頃に、紙面いっぱいに赤い丸を描いた画用紙を俺は今でも大事に持っている。その赤い丸は屋敷中にボスキが飾った紅い薔薇だと思っていたけれど、実は俺を描いたものだと知ってからますます捨てられなくなった。多分今描かれているデッサンも俺は捨てられないだろうな。
俺が死ぬときが来たら、棺の中にそっと入れてもらえるよう誰かに頼まないとね。
「ねぇ、フェネス」
「何でしょうか、主様?」
「好きよ」
主様は机に肘をつき、何でもない世間話でもするかのように俺を見上げてくる。
それへの俺の答えは、もちろん——
主様は、今日は朝から熱心にデッサンをしている。モデルは俺。うーん、俺なんかよりもっと絵画映えする執事もいると思うのに……たとえばハウレスとか……。
「主様、そろそろ休憩になさいませんか? 頑張りすぎるのはよくありませんよ」
「うーん……あともうちょい……」
「先ほどもそうおっしゃいました。それに、同じ姿勢をずっと続けている俺も疲れました。少し休憩したいです」
最近学んだこと。それは、俺がこういう風に言えば、主様はきちんと休憩してくださるということ。
「うぅぅ……分かった! そこまで言うなら休憩しよう!」
スケッチブックをテーブルにうつ伏せにして置くと盛大に伸びをした主様は、先ほどまで眉間に皺を寄せていたのと同一人物とは思えないほど、あどけない表情を見せている。
「それではお茶をご用意いたしますね。何かご希望はございますか?」
両手を握りしめて伸びをしたまま椅子の背もたれに上半身を預けている主様は、あくびをひとつした。
「ニルギリのアイスミルクティー。ほんのり甘めで」
「フフッ、かしこまりました」
グラスが汗をかき始める頃に部屋の扉をノックしたけれど、反応がない。
どうしたんだろう?
「主様? フェネスです。入りますね」
断りを入れて扉を開けば、主様はまた熱心にスケッチブックと向き合っていた。
「ニルギリのアイスミルクティーです」
「んんー……あともうちょい」
主様、12年前と変わっていないなぁ……。
「アイスミルクティー」
「ん?」
シャッシャッと走っていた鉛筆の音が止まった。
「デッサンは逃げませんが、アイスミルクティーは薄くなってしまいます」
「うぅ……フェネスには敵わないなー」
ふぅ、とため息をついた主様の肩越しに見えたのは、椅子に足を組んで座り、窓の外に視線を投げている俺の姿だ。
まだ主様が2歳だった頃に、紙面いっぱいに赤い丸を描いた画用紙を俺は今でも大事に持っている。その赤い丸は屋敷中にボスキが飾った紅い薔薇だと思っていたけれど、実は俺を描いたものだと知ってからますます捨てられなくなった。多分今描かれているデッサンも俺は捨てられないだろうな。
俺が死ぬときが来たら、棺の中にそっと入れてもらえるよう誰かに頼まないとね。
「ねぇ、フェネス」
「何でしょうか、主様?」
「好きよ」
主様は机に肘をつき、何でもない世間話でもするかのように俺を見上げてくる。
それへの俺の答えは、もちろん——
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