少しだけの道のりを
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調理担当のロノから買い出しを頼まれた。主様はその話を聞きつけ、一緒に行くと言われたので馬車で街までやって来た。
食材を調達する前に、主様には新しい児童文学書を、自分には気になっていた小説を購入するためにいつもの本屋に入る。真新しい紙とインクの香りにワクワクしていると「フェネス、あっち」と言いながら主様は俺の手を引っ張った。
連れて行かれた先は児童文学ではなく美術のコーナー。
「フェネス、この本がほしいの」
エスポワールの街にある美術館の模写を集めた本だ。しかしそれを買ってしまうと完全に予算オーバーで食料品の店に辿り着けそうもない。
「次に街へ来るときに必ず買うので、今日は我慢していただけませんか?」
主様に提案すれば少し渋い表情をしたものの首を縦に振ってくださった。
そうなると自分のだけというわけにもいかず、俺も今日は手ぶらで本屋を出た。
買い出しを済ませた俺の荷物を持ちたいと主様が言い出されたので、焼き菓子の入った紙袋をお願いする。上機嫌の主様の手を再び取れば、ふふふっと嬉しそうに笑っている。
「こういうの、デートっていうのかな? たのしい」
唐突なおませ発言に「あ、主様⁉︎」と言った俺の声は上擦っていた。
「こんど来るときは本やさんデートよね。たのしみ」
慌てる俺と楽しそうな主様を見た肉屋の店主が微笑ましそうに相合を崩す。
「いいねー、お父さん。いつか手を繋ぐのも嫌がるようになるから、今のうちに堪能しとくといいよ」
そうか、街の人たちからしてみれば俺は主様の父親に見えるのか。
嬉しいような、そうでもないような不思議な気持ちに包まれたまま馬車までの少しだけの道のりを一緒に歩き、街を後にした。
食材を調達する前に、主様には新しい児童文学書を、自分には気になっていた小説を購入するためにいつもの本屋に入る。真新しい紙とインクの香りにワクワクしていると「フェネス、あっち」と言いながら主様は俺の手を引っ張った。
連れて行かれた先は児童文学ではなく美術のコーナー。
「フェネス、この本がほしいの」
エスポワールの街にある美術館の模写を集めた本だ。しかしそれを買ってしまうと完全に予算オーバーで食料品の店に辿り着けそうもない。
「次に街へ来るときに必ず買うので、今日は我慢していただけませんか?」
主様に提案すれば少し渋い表情をしたものの首を縦に振ってくださった。
そうなると自分のだけというわけにもいかず、俺も今日は手ぶらで本屋を出た。
買い出しを済ませた俺の荷物を持ちたいと主様が言い出されたので、焼き菓子の入った紙袋をお願いする。上機嫌の主様の手を再び取れば、ふふふっと嬉しそうに笑っている。
「こういうの、デートっていうのかな? たのしい」
唐突なおませ発言に「あ、主様⁉︎」と言った俺の声は上擦っていた。
「こんど来るときは本やさんデートよね。たのしみ」
慌てる俺と楽しそうな主様を見た肉屋の店主が微笑ましそうに相合を崩す。
「いいねー、お父さん。いつか手を繋ぐのも嫌がるようになるから、今のうちに堪能しとくといいよ」
そうか、街の人たちからしてみれば俺は主様の父親に見えるのか。
嬉しいような、そうでもないような不思議な気持ちに包まれたまま馬車までの少しだけの道のりを一緒に歩き、街を後にした。
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