ーーー私 の夢、希望、妄想です。
IWGP
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小競り合い、大きな通りで喧嘩騒動、最近騒がしい。抗争前にはよくあることだ。
開戦の支度をするべきか、和睦の道を探すか。今は思案中。そのために毎日毎日情報の吸い上げ。
「それと、」
副官が言い淀む。目がおかしな色をする。怒り、憎悪、そんな感じ。
「愛坂私子がエンジェルスに入りました。」
「なに?」
そんなはずがない。私子はずっと前からの知り合いで、いつも俺の隣にいた。最近はエンジェルスのヘッドと仲良くしていたが、エンジェルスに入るなんて聞いてない。あいつがそんなものに入るはずもない。私子が俺に楯突くようなことを。
「昨日、エンジェルスの幹部がもつネックレスをしていたのを、うちのものが見ています。銀の羽根。」
あの馬鹿。考えなしにも程がある。
私子はエンジェルスに入った訳じゃない、きっとヘッドの京一にでももらっただけだ。
それをこいつらに言ったところで、納得はしないだろう。私子のことを嫌っている。
「分かった、俺が話をする。みんなにあいつには手出ししないよう言っておけ。勝手なことは許さないと。」
溜息を吐き、もう一度口の中で呟く。あの馬鹿。
その日、久々に雛子を呼び出した。ここ最近俺が忙しかったのと、私子が東池袋中央公園に入り浸っていたせい。最近では、私子は学校帰りまっすぐエンジェルスの拠点に行き、夜になると京一が家まで送っていく。誤解されても仕方ない。
いつものパイプベンチに座り、足をブラつかせる私子の背中を車の中から見付けた。
慣れた番号に電話を掛ける。私子が慌てて鞄を漁っている。やっと携帯を取った、耳に当てるまでが遅く、もどかしい。
『はい、もういるよ。』
「入口にいる、さっさと来い。」
そのまま電話を切った。私子のことはもう見なかった。見なくても分かる。電話が切れた事にも気付かず、耳に当てたまま、振り返って俺を探す。見付けたら、一目散に駆けてきて、嬉しさを隠しきれない顔で窓をノックするんだ。
コンコン。小さな拳がスモークガラスにぶつかる。拳の大きさは心臓と大体同じというが、私子はあんな小さな心臓で動いてるのだろうか。
手を伸ばし、内側からドアを開けてやる。
上目遣い。車高が高いから、狙ってる訳ではないだろうが。
「こんばんは、どうしたの。」
「乗れ。」
俺の態度は普通だったと思う。全ては誤解だし、私子が男と遊んでも俺が怒ることはない。そういうことはある。俺には特によくある。ただ、私子には初めてってだけで。
苦労して俺の横に腰を乗せた私子は、重たいドアをまた苦労して閉めた。生きるだけで大変そう。
ドアを閉めた拍子に、セーラー服の襟から銀の翼が覗いた。銀の細いチェーンに吊るされたそれは、何も知らなければただのアクセサリーだろう。
「出せ。」
音もなく滑り出した車内で、俺はふつふつと怒り始めていた。理由は分からないけど、腹が立って仕方がない。
「ねぇ、どこ行くの。」
「別にどこも。」
「…じゃあ、どこ向かってるの。」
「どこでもない。ただ走ってる。」
私子がおかしそうに笑う。なにそれと。
俺も笑顔を作って私子の方を向いた。
「俺もお前に聞きたかったんだ、なにそれって。」
笑顔からゆっくりと不思議そうな表情になる。私子は俺を知っているから、この笑顔が作り物だと気付いている。私子がおそるおそる自分の胸元にある翼に視線を落とした。
「そう、それだ。お前はいつからエンジェルスになった?」
空気が凍った気がした。少なくとも私子の中では血が凍るようだったと思う。強張った顔を横に振る。
「入ってない、違うの、これは…」
小さな手が翼を握り締める。翼を守るようになのか、守ってもらうようになのかは知らないが。
「説明しろ。それはなんだ。」
ぽつりぽつりと語り出したのは、俺が思っていたのとそう変わらない。
私子がエンジェルスの本拠地に入ろうとした時、入り口で止められた。騒ぎを聞き付けた京一が場を治め、私子には何の被害もなかった。また同じことがない様にと京一がこのネックレスをくれたという。別にエンジェルスのメンバーに入らなくていい、ただの通行許可証だからと言って。私子はそれを鵜呑みにして、陽気にエンジェルスの首輪を付けたという訳。それが首を狩られる理由になるとも知らずに。
「エンジェルスには入ってない、ほんとうだよ。これだって京一が心配してくれただけで、他には何の意味もないし…。」
「お前は何も分かってないな。俺たちとあいつらが戦争になるかならないかの状況だっていうのに、お前はあいつらの首輪を付けて俺たちの縄張りをうろついた。挑発行為にしか見えない。尾崎京一はお前を良いように使い、俺たちに戦争を仕掛けるつもりなんだ。」
「そんなんじゃない、…京一はそんな事言ってなかった。それに戦争なんて、京一がする訳ない」
「お前にあいつの何が分かるんだ。たかだか3カ月かそこら居ただけで。」
「でも…、そんな人じゃない。争いはしたくないって、京一は言ってたもん。」
「俺よりあいつを信じるのか。」
悲しさと驚きを混ぜたような顔。私子の目に映る俺の顔も似たような表情だった。
思ってもいなかった。いつの間にか、私子の中であの男がここまで巣食っているなんて。
俺の中でスイッチが切り替わった。安藤崇から、氷のキングに。私子にはそんな顔を見せたことない。
「お前がエンジェルスでないというなら、態度で示せ。ひとつ、二度とその赤い首輪をするな。ふたつ、二度とあいつらの縄張りに入るな。みっつ、二度と尾崎京一含めあいつらに接触するな。」
でも、と私子が呟いた。声に力がないせいか、私子の存在感すら薄くなった気がする。
「でも、明日、京一と約束があって」
「だから、なんだ。黙ってろ、俺の話が途中だ。」
私子は呆然とキングを見ている。俺ではないキングを。
「それが守れている間は、俺がGボーイズを抑えよう。お前に手出しはさせない。お前はうちの縄張りでは自由にさせてやる。ただし、ひとつでも約束を破った時、俺はその命令を解除する。」
もう一度笑顔を作ってやると、面白いほど私子の肩が跳ねる。ドアに背を付け、それでもまだ下がろうとする。
「お前の家は俺たちの縄張りの中にある。学校へ行く時も、買い物へ行く時も、家から出た瞬間、お前は俺たちに狙われる。できるのなら京一の所へ逃げてもいい、けど、お前の家族は俺たちの縄張りにいることを忘れるなよ。あの店がなくなったら、お前の家族はどうなるんだろうな。」
「やめて、タカシくんおかしいよ。」
意味もなく宙を眺めた。なんとなく、怯える私子を見たくなかったのかもしれない。
「そうかもな。けど、これが俺だ。お前の知らない顔もあるってことだ。それでも長い付き合いだ、俺が気が短いのは知ってるな。ここで返事をしろ。」
呆然としたまま頷けもしないでいる私子の首元に手を伸ばした。鈍く光る翼を掴み、私子の身体を引き寄せた。押し殺した悲鳴が革のシートに吸い込まれる。
「私子、約束できるな。」
唇を噛み締め、涙を流さないよう目蓋を硬く閉じ、私子は沈黙する。俺への抵抗のつもりらしい。気付けば声を上げて笑っていた。
「なぁ、あまり俺を怒らせるなよ。今なら許してやると言っている。お前は馬鹿だけど、分別はある。俺より、あいつを選ぶとは言わないよな?」
小さな頭が微かに縦に振られた。
翼から手を離し、私子の頭の上に乗せた。滑らかな黒髪を上から下へと撫でる。
「お前のことは守ってやる、だから、余計なことをするなよ。」
俯く顔は表情を見せない。丸い頬に、扇状の睫毛が影を作る。そこにある丸い涙の粒は見ないことにした。
西一番街へと言うと、運転手が小さく返事をした。
家の前に着いた時、私子はもう涙を拭っていた。降りようとする背中に言う。
「私子、約束を忘れるな。」
振り返った私子は一度きつく俺を睨んでから、ふにゃりと力の抜けた泣き顔になる。
「タカシくん、どうしちゃったの。変だよ。」
確かにそうかもしれない。こいつの恋を邪魔するような真似、何故俺がするのか。
「お前を巻き込みたくない。」
それだけ。それ以外、ある訳ないと自分に言い聞かせる。
開戦の支度をするべきか、和睦の道を探すか。今は思案中。そのために毎日毎日情報の吸い上げ。
「それと、」
副官が言い淀む。目がおかしな色をする。怒り、憎悪、そんな感じ。
「愛坂私子がエンジェルスに入りました。」
「なに?」
そんなはずがない。私子はずっと前からの知り合いで、いつも俺の隣にいた。最近はエンジェルスのヘッドと仲良くしていたが、エンジェルスに入るなんて聞いてない。あいつがそんなものに入るはずもない。私子が俺に楯突くようなことを。
「昨日、エンジェルスの幹部がもつネックレスをしていたのを、うちのものが見ています。銀の羽根。」
あの馬鹿。考えなしにも程がある。
私子はエンジェルスに入った訳じゃない、きっとヘッドの京一にでももらっただけだ。
それをこいつらに言ったところで、納得はしないだろう。私子のことを嫌っている。
「分かった、俺が話をする。みんなにあいつには手出ししないよう言っておけ。勝手なことは許さないと。」
溜息を吐き、もう一度口の中で呟く。あの馬鹿。
その日、久々に雛子を呼び出した。ここ最近俺が忙しかったのと、私子が東池袋中央公園に入り浸っていたせい。最近では、私子は学校帰りまっすぐエンジェルスの拠点に行き、夜になると京一が家まで送っていく。誤解されても仕方ない。
いつものパイプベンチに座り、足をブラつかせる私子の背中を車の中から見付けた。
慣れた番号に電話を掛ける。私子が慌てて鞄を漁っている。やっと携帯を取った、耳に当てるまでが遅く、もどかしい。
『はい、もういるよ。』
「入口にいる、さっさと来い。」
そのまま電話を切った。私子のことはもう見なかった。見なくても分かる。電話が切れた事にも気付かず、耳に当てたまま、振り返って俺を探す。見付けたら、一目散に駆けてきて、嬉しさを隠しきれない顔で窓をノックするんだ。
コンコン。小さな拳がスモークガラスにぶつかる。拳の大きさは心臓と大体同じというが、私子はあんな小さな心臓で動いてるのだろうか。
手を伸ばし、内側からドアを開けてやる。
上目遣い。車高が高いから、狙ってる訳ではないだろうが。
「こんばんは、どうしたの。」
「乗れ。」
俺の態度は普通だったと思う。全ては誤解だし、私子が男と遊んでも俺が怒ることはない。そういうことはある。俺には特によくある。ただ、私子には初めてってだけで。
苦労して俺の横に腰を乗せた私子は、重たいドアをまた苦労して閉めた。生きるだけで大変そう。
ドアを閉めた拍子に、セーラー服の襟から銀の翼が覗いた。銀の細いチェーンに吊るされたそれは、何も知らなければただのアクセサリーだろう。
「出せ。」
音もなく滑り出した車内で、俺はふつふつと怒り始めていた。理由は分からないけど、腹が立って仕方がない。
「ねぇ、どこ行くの。」
「別にどこも。」
「…じゃあ、どこ向かってるの。」
「どこでもない。ただ走ってる。」
私子がおかしそうに笑う。なにそれと。
俺も笑顔を作って私子の方を向いた。
「俺もお前に聞きたかったんだ、なにそれって。」
笑顔からゆっくりと不思議そうな表情になる。私子は俺を知っているから、この笑顔が作り物だと気付いている。私子がおそるおそる自分の胸元にある翼に視線を落とした。
「そう、それだ。お前はいつからエンジェルスになった?」
空気が凍った気がした。少なくとも私子の中では血が凍るようだったと思う。強張った顔を横に振る。
「入ってない、違うの、これは…」
小さな手が翼を握り締める。翼を守るようになのか、守ってもらうようになのかは知らないが。
「説明しろ。それはなんだ。」
ぽつりぽつりと語り出したのは、俺が思っていたのとそう変わらない。
私子がエンジェルスの本拠地に入ろうとした時、入り口で止められた。騒ぎを聞き付けた京一が場を治め、私子には何の被害もなかった。また同じことがない様にと京一がこのネックレスをくれたという。別にエンジェルスのメンバーに入らなくていい、ただの通行許可証だからと言って。私子はそれを鵜呑みにして、陽気にエンジェルスの首輪を付けたという訳。それが首を狩られる理由になるとも知らずに。
「エンジェルスには入ってない、ほんとうだよ。これだって京一が心配してくれただけで、他には何の意味もないし…。」
「お前は何も分かってないな。俺たちとあいつらが戦争になるかならないかの状況だっていうのに、お前はあいつらの首輪を付けて俺たちの縄張りをうろついた。挑発行為にしか見えない。尾崎京一はお前を良いように使い、俺たちに戦争を仕掛けるつもりなんだ。」
「そんなんじゃない、…京一はそんな事言ってなかった。それに戦争なんて、京一がする訳ない」
「お前にあいつの何が分かるんだ。たかだか3カ月かそこら居ただけで。」
「でも…、そんな人じゃない。争いはしたくないって、京一は言ってたもん。」
「俺よりあいつを信じるのか。」
悲しさと驚きを混ぜたような顔。私子の目に映る俺の顔も似たような表情だった。
思ってもいなかった。いつの間にか、私子の中であの男がここまで巣食っているなんて。
俺の中でスイッチが切り替わった。安藤崇から、氷のキングに。私子にはそんな顔を見せたことない。
「お前がエンジェルスでないというなら、態度で示せ。ひとつ、二度とその赤い首輪をするな。ふたつ、二度とあいつらの縄張りに入るな。みっつ、二度と尾崎京一含めあいつらに接触するな。」
でも、と私子が呟いた。声に力がないせいか、私子の存在感すら薄くなった気がする。
「でも、明日、京一と約束があって」
「だから、なんだ。黙ってろ、俺の話が途中だ。」
私子は呆然とキングを見ている。俺ではないキングを。
「それが守れている間は、俺がGボーイズを抑えよう。お前に手出しはさせない。お前はうちの縄張りでは自由にさせてやる。ただし、ひとつでも約束を破った時、俺はその命令を解除する。」
もう一度笑顔を作ってやると、面白いほど私子の肩が跳ねる。ドアに背を付け、それでもまだ下がろうとする。
「お前の家は俺たちの縄張りの中にある。学校へ行く時も、買い物へ行く時も、家から出た瞬間、お前は俺たちに狙われる。できるのなら京一の所へ逃げてもいい、けど、お前の家族は俺たちの縄張りにいることを忘れるなよ。あの店がなくなったら、お前の家族はどうなるんだろうな。」
「やめて、タカシくんおかしいよ。」
意味もなく宙を眺めた。なんとなく、怯える私子を見たくなかったのかもしれない。
「そうかもな。けど、これが俺だ。お前の知らない顔もあるってことだ。それでも長い付き合いだ、俺が気が短いのは知ってるな。ここで返事をしろ。」
呆然としたまま頷けもしないでいる私子の首元に手を伸ばした。鈍く光る翼を掴み、私子の身体を引き寄せた。押し殺した悲鳴が革のシートに吸い込まれる。
「私子、約束できるな。」
唇を噛み締め、涙を流さないよう目蓋を硬く閉じ、私子は沈黙する。俺への抵抗のつもりらしい。気付けば声を上げて笑っていた。
「なぁ、あまり俺を怒らせるなよ。今なら許してやると言っている。お前は馬鹿だけど、分別はある。俺より、あいつを選ぶとは言わないよな?」
小さな頭が微かに縦に振られた。
翼から手を離し、私子の頭の上に乗せた。滑らかな黒髪を上から下へと撫でる。
「お前のことは守ってやる、だから、余計なことをするなよ。」
俯く顔は表情を見せない。丸い頬に、扇状の睫毛が影を作る。そこにある丸い涙の粒は見ないことにした。
西一番街へと言うと、運転手が小さく返事をした。
家の前に着いた時、私子はもう涙を拭っていた。降りようとする背中に言う。
「私子、約束を忘れるな。」
振り返った私子は一度きつく俺を睨んでから、ふにゃりと力の抜けた泣き顔になる。
「タカシくん、どうしちゃったの。変だよ。」
確かにそうかもしれない。こいつの恋を邪魔するような真似、何故俺がするのか。
「お前を巻き込みたくない。」
それだけ。それ以外、ある訳ないと自分に言い聞かせる。