Ep.2
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ここのライブ会場のオーナーヤナさんという人に
少し裏を借りてくれたらしい。
柚月が泣きながら教えてくれた。
「ごめんね…!なんでもっと早く気付いて上げられなかったんだろう…!」
「え、なんでそんなこと思うの!私が楽しくて叫びすぎたからでしょ~!気にしないの!」
本当は違う。
あまりにも苦しそうな蘭丸を見て
私まで苦しくなっていた。
そんなことは言えないが…。
「おう、もう大丈夫か?」
ガタイはしっかりしてるが温厚そうな人。
「ヤナさん!目が覚めたみたいだから大丈夫そう!
ちょっと私連絡だけしてくるよ!」
そう言ってか足早に外に出た。
帰りの手配までしてくれるみたい…
申し訳ないな…。
「あんた、ベーシストの知り合いか?」
突然降ってきた言葉にビクリと身体が揺れた。
「知り合いなんだな。」
「…いえ、知らないです。」
「嘘つけ。蘭丸蘭丸って叫んでたとさっきの子が言ってた。」
「……。」
あまりバレたくない事実。
過去の事は極力触れられたくないからだ。
彼と私だけの…思い出だから…。
「…あいつな。合わなくて今日で辞めるとよ。」
さっきのバンドをな。
と付け加えてきた。
「ヤナさん…?は彼とは親しいんですか…」
下を向きながら口を開く。
「まあ、それなりにな。アイツの音をここで殺しちまうのは違うだろ。」
ヤナさんはそっぽ向いた。
その続きを紡ぐか悩んでるからだろう。
何せバンドマンを沢山ここで披露してるからこそ。
「…蘭丸に合う程の熱がないんですね。」
「そうだろうよ。大方な。」
私も感じていた。違う。この軽い音では蘭丸の音に飲み込まれると。
ベースはあくまでベースだ。
遊び心を付けるにしたってベースを立てるだけの弾き方をしなくてはならない。
それが蘭丸にはできない。
誰かの作られた音だけをなぞることなんて蘭丸にはきっと出来ない。
逸脱とかでなく。ファンの熱に誰よりも敏感なんだろう。
応えたいという気持ちも。
「…蘭丸は…今でも約束を守ってくれています。」
「自分の音を信じていてくれます。」
「私は…彼が彼であり続ける限り…蘭丸の音を見つけにいきます。」
「…やっぱりあんたか。今日のBOXの手紙を渡した時、明らかに血相を変えてたんだあいつ。」
「…深雪…!ってな。」
私とはわからない…というかイニシャルだけ書いて渡している。
何となく…昔の思い出にして欲しくて。
でないと…私は黒崎蘭丸にあらぬ感情を抱きそうだったから。
「もし、あんたがあいつをこれからも支えてくれるってなら、あいつの来る日、他のハコオーナーにも聞いてやる。」
だが。
と一言置いてヤナさんは続ける。
「半端な覚悟ならもう二度と来るな。あいつのためにも。あんたのためにも。」
半端…私が半端…?
いや、そんなこと絶対させない。
彼が彼でい続けてくれると約束してくれるうちは
私が彼を離さない。
「私だけが彼を支えられる。そう思っています。」
やはりエゴだ。
彼の音を聞き続けていたいという私の。
いつ終わるかわからない。無駄足になるかもしれない。
でも関係ない。関係ないんだ。
一瞬を大切にするって決めたから。