Ep.5
夢小説設定
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仕事が少し窮屈になっていた。
聞き耳を立てれば
「あの子は」「最低!」「何であんなのが?」
と聞こえることばかりだ。
慣れてしまえば…。
最近蘭丸の歌も満足に聞けてないな。
追い詰められたら最後。
何もかもが怖くなる。
「あっ、白鷺さん!今日暇かしら?」
隣部署の人だ。
断りたい。本音は。でも断ったら何も解決しない。
「あ…はい。 」
「なら今日ここに来てくれる?」
ピラっと紙切れを渡される。
「私行こうと思ってたんだけど行けなくてぇ~バンド好きなんだって?」
どこの情報なの…それ…
「ええ…分かりました…。最近行けてないですし有難く貰います…。」
行く気もなかったし、蘭丸の歌でないのなら尚のことあまり興味がなかった。
でも行かなかったら行かなかったで何か言われるんだろうな。
夕方早めに上がれた私はそのバンドのハコに向かう。
ヤナさん経由でも全く聞かないから新しいのかな。
まあ、いいや。
一度空っぽになるのも大事なのかも…。
そうしたら…蘭丸のことも…東雲くんのことも…陰口のことも…忘れられるかな。
…正直に感想を言おう。
とてもじゃないけど聞けるものじゃなかった。
吐き気すら感じる…。
「あれ?君もう帰るの?」
「え?あ、はい。」
さっきドラムをやってた人だ。こんなに距離が近いものなの…?今までそんなこと無かったから怖い。
「いいじゃん!もう少しいいことしようぜ?」
グイッと引っ張られる。
さっきのハコの中は裸体が転がっている。
「ひっ…!」
初めて見る景色と気持ち悪さが一気に上がる。
女の喘ぐ声、なんの音とも形容したくない交ざる音。
「…キミもこれをシに来たんでしょ?」
「違っ…!」
唇を奪うようなそんな初めてのキスは汚かった。
もうその後は記憶なんてない。
思い出したくもない。
時刻にすれば夜中の3時
そのままフラフラと辿り着いた公園で吐いてしまった。
気持ち悪い。何が。あの場所が。
気持ち悪い。何が。バンドが。
気持ち悪い。何が。私が。
そこまで来た時、やっと安堵したように涙がボロボロこぼれる。
「たっ、助けて…ら、んまる…」
来るはずもない人の名前を呼ぶ。
「にゃーあん」
綺麗な銀色の目の黒い猫がいた。
「まるで、蘭丸みたいだね…きみ。」
私が初めて会った時の蘭丸はまだオッドアイじゃなかったから余計に蘭丸に見えた。
「にゃあ」
スリ…と寄ってきてくれたのが本当に嬉しくて落ち着いた。
まるでそこに蘭丸がいる気すら覚えた。