Ep.1
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生憎の雨だった。
中学生になって早1年と2ヶ月、
6月という天気らしい。
いつも通りの道を帰っていればそれはそれまでだった
私の何気ない日々に色を着けたのはこの日が初めてになるのを私はまだ知らない。
そんないつも通りの道を逸れて遠回りをして帰る。
「雨の日なのに遠回りしたくなるのは何でなんだろうなあ…」
傘をクルクル回しながら肩を少し濡らして雨を楽しんでるようなそんな遠回り。
いつもの道なら聞くことの無い程ハッキリとお腹にまで響く音が聞こえてきた。
いつもの道にも楽器を持って歌う人はいた。
でもその人は違った。
こんな雨の日、雨ざらしの中掻き鳴らしていた。
声と音が交わると、私の中で弾いてるんじゃないかと思うくらいに中から震えてくる。
魅入ってしまった。
きっとそう。足を止めてしまう程に。
感情的に楽しそうに。この人の音を聴き入ってしまった。
でも音にも彼にも詳しくない私にはそれしか聞こえなかった。
もっとざわつかせるものがあったとしても、理解など出来なかった。
ただ聴きたいと思ったのだ。
「…ンだよ…。もう終わりだ」
初めて会話をしたとは思えない程素っ気なかった。
さっきの歌と音の使い手だとも思えなかった。
でも
「また聴きに来ます!!!お兄さん凄くかっこよかったです!」
傘すらも忘れてこの高揚感を伝えたくて
手を握った。
彼は呆気を取られた様な表情。
数秒固まってから口を開く。
「…はぁ?変なヤツだな。おまえ。」
「めちゃくちゃかっこよかったです!また聴きたいと思いました!!CDとかあるんですか!」
次から次に質問する私に面倒くさそうにする彼。
「…ねぇよ。まだこっち来てそんな経ってねぇ。でもそのくらい有名になってやる。」
面倒臭い癖にしっかり答えてくれるのは彼の性格なんだろう。
「お兄さんなら、なれるよ!」
心からそう思った。
「私みたいに立ち止まってでも聴きたいって思う人沢山いるよ!絶対!」
彼は照れたのか、んぐっなんて声にならない声を出す。
「……ありがとな。おまえ変なヤツだけど。」
握ってた手はいつの間にか私の頭をぽんぽんと撫でた。
「…っ!あ、お、お兄さんの名前!名前も知らないのにCD買えないよ!」
ちょっとドクンってなったのは秘密だ。
「あ?蘭丸だ。黒崎蘭丸。サインでもやるか?」
価値もねえけどなって添えながら。
「らんまる、ね!覚えたよ!」
「サインも欲しい!ファン第一号だね!!
ファンは大切にしなきゃなんだよ!価値もね、」
カバンの中からノートとペンを取り出しながら
私は何気ない一言のように言った。
「私が決めるの。らんまるが決めることじゃないんだよ」
はいっ!ってノートとペンを差し出した。
「っ。うっせぇ…ガキがいっちょまえに。」
サラサラと書いたのを見てプロだあ~!って口に出ていた。
「…名前。おまえの名前は?ファン第一号サンよぉ?」
少し笑った彼がおちゃらけて言った。
「あ、私は白鷺 深雪!」
少し文字を書いて渡してきた。
「ほらよ。大切にしろよ。数年後にはプレミアだぜ。」
「う、売らないよ!!これは私の為のサインだもん!」
「蘭丸!!」
もう楽器を背負い帰ろうとする彼は振り向いた。
「絶対またあなたに会いに行きます!!」
手を大袈裟な程に振った。
また明日会えるのかな。
もう会えないのかな。
それすらもわからない。
ただ彼の名前は知れた。
黒崎 蘭丸
知らない漢字。これはらん と、読むんだ。
ノートに大きく
サインと共に、
ファン第一号、白鷺 深雪へ
また、おまえに会えるのを楽しみにしてる。
黒崎蘭丸
そう書かれていた。
中学生になって早1年と2ヶ月、
6月という天気らしい。
いつも通りの道を帰っていればそれはそれまでだった
私の何気ない日々に色を着けたのはこの日が初めてになるのを私はまだ知らない。
そんないつも通りの道を逸れて遠回りをして帰る。
「雨の日なのに遠回りしたくなるのは何でなんだろうなあ…」
傘をクルクル回しながら肩を少し濡らして雨を楽しんでるようなそんな遠回り。
いつもの道なら聞くことの無い程ハッキリとお腹にまで響く音が聞こえてきた。
いつもの道にも楽器を持って歌う人はいた。
でもその人は違った。
こんな雨の日、雨ざらしの中掻き鳴らしていた。
声と音が交わると、私の中で弾いてるんじゃないかと思うくらいに中から震えてくる。
魅入ってしまった。
きっとそう。足を止めてしまう程に。
感情的に楽しそうに。この人の音を聴き入ってしまった。
でも音にも彼にも詳しくない私にはそれしか聞こえなかった。
もっとざわつかせるものがあったとしても、理解など出来なかった。
ただ聴きたいと思ったのだ。
「…ンだよ…。もう終わりだ」
初めて会話をしたとは思えない程素っ気なかった。
さっきの歌と音の使い手だとも思えなかった。
でも
「また聴きに来ます!!!お兄さん凄くかっこよかったです!」
傘すらも忘れてこの高揚感を伝えたくて
手を握った。
彼は呆気を取られた様な表情。
数秒固まってから口を開く。
「…はぁ?変なヤツだな。おまえ。」
「めちゃくちゃかっこよかったです!また聴きたいと思いました!!CDとかあるんですか!」
次から次に質問する私に面倒くさそうにする彼。
「…ねぇよ。まだこっち来てそんな経ってねぇ。でもそのくらい有名になってやる。」
面倒臭い癖にしっかり答えてくれるのは彼の性格なんだろう。
「お兄さんなら、なれるよ!」
心からそう思った。
「私みたいに立ち止まってでも聴きたいって思う人沢山いるよ!絶対!」
彼は照れたのか、んぐっなんて声にならない声を出す。
「……ありがとな。おまえ変なヤツだけど。」
握ってた手はいつの間にか私の頭をぽんぽんと撫でた。
「…っ!あ、お、お兄さんの名前!名前も知らないのにCD買えないよ!」
ちょっとドクンってなったのは秘密だ。
「あ?蘭丸だ。黒崎蘭丸。サインでもやるか?」
価値もねえけどなって添えながら。
「らんまる、ね!覚えたよ!」
「サインも欲しい!ファン第一号だね!!
ファンは大切にしなきゃなんだよ!価値もね、」
カバンの中からノートとペンを取り出しながら
私は何気ない一言のように言った。
「私が決めるの。らんまるが決めることじゃないんだよ」
はいっ!ってノートとペンを差し出した。
「っ。うっせぇ…ガキがいっちょまえに。」
サラサラと書いたのを見てプロだあ~!って口に出ていた。
「…名前。おまえの名前は?ファン第一号サンよぉ?」
少し笑った彼がおちゃらけて言った。
「あ、私は白鷺 深雪!」
少し文字を書いて渡してきた。
「ほらよ。大切にしろよ。数年後にはプレミアだぜ。」
「う、売らないよ!!これは私の為のサインだもん!」
「蘭丸!!」
もう楽器を背負い帰ろうとする彼は振り向いた。
「絶対またあなたに会いに行きます!!」
手を大袈裟な程に振った。
また明日会えるのかな。
もう会えないのかな。
それすらもわからない。
ただ彼の名前は知れた。
黒崎 蘭丸
知らない漢字。これはらん と、読むんだ。
ノートに大きく
サインと共に、
ファン第一号、白鷺 深雪へ
また、おまえに会えるのを楽しみにしてる。
黒崎蘭丸
そう書かれていた。