愛しい貴方へ紡ぎます。
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たまたま呼ばれた。お前しかいない
だからベース頼む。と。
何度目だ。段々と気合が入らなくなる。
突発的な音ほど浅えからな。
まあだからといって、やるからにはやるが。
「わかった、やってやる。生半可な音出すんじゃねえよ。」
客は分かる。
そう言って楽譜を取る。
難しくねえ音の羅列。
いじるつもりだ。こんなのつまんねえ。
つまらねえ音を聞かせるのは客に失礼だ。
来てくれる奴らがいるからおれらは食えてる。
そんなおれ達の音に共感出来るやつに適当な音を聞かせられるかってんだ。
そういや…あいつはどうしてるんだろうか。
もう、あれから3年経った。
もう忘れられてるか?
それでもいい。
もう、あいつのために弾いてるわけじゃねえ。
でもあいつの言葉を忘れられる日はなかった。
あいつだけはまだおれを追いかけてくれている。
そんな錯覚にすら陥る。
「んなわけ、ねえだろうが…。」
乾いた笑いすら込み上げてくる。
おれはおれの音を信じる。
そうしてねえと…今ここで弾けてねえんだ。
あいつがいたから。あの時、おれの音をおれが信じないでどうする。って言ってくれた、あいつがいたから
おれは今まで弾けてる。
皮肉なもんだろ。
「蘭丸!もう始まるから、頼んだぜ!」
「…おう。今行く。」
ワァー!と湧くこのハコが好きだ。
熱気がおれを更に上へと連れってってくれるようなそんな熱さ。
軽くチューニングをする。
ああ。これだ。ここだ。
耳が正確に4弦の音を合わせる。
今日も湧くぜ。おまえとなら。
頼んだぞ…!
相棒のベースにそう伝えるように軽くメロディをなぞった。
最初こそ、楽しかった。
アレンジを加えたりした
だが、音は正直だ。
明らかにズレてきやがる。
ピッチも合わねえ。
汚ねえ。
チラッと見やる。
誰も何も気にしない。
ハコも湧いてくる。
…オイオイ。マジかよ…。こんな音で満足なのか…?こいつらは…。
いつも軽快に弾く弦が一気に重く感じた。
ただ汚い音に重ねる音ほど
苦痛なものはない。
本気 じゃない。こんな音許したくねえ…!
でもここでズラせばシラける。
苦しい…つまらねえ、おれの音はどこにある…?
そんな苦しい、つまらない音を掻き鳴らしながら
楽譜の音をなぞる。
早く終われ、とすら感じた。
1秒、1音、全て煩わしい。
おれがおれでなくなっていくような…
客席の声なんて聞こえてなかった。
聞こえることもなかった。
全て閉じたくなったから。
ただ、最後の最後…
「蘭丸っ…!」って
叫ばれた気がして、顔を上げる。
おれなんて、今日来ることを知ってるやつなんていないはずだ。
ただおれの耳はそいつを捕えた。
…まだまだガキだが、ただのクソガキだった女が
おれに手を伸ばすのを。
音なんてもう知らなかった。
甘えた。
あいつの手を捕まえたかった。
ああ、やっぱりこいつはおれを追いかけてくれている。
今も。
こんな
ひでえ音を鳴らしていても。
なあ、おれの音はおれだったか…?
深雪っ…おまえだろ…?
もう、その後のことは覚えてねえ。
二度とこのバンドには戻れなくなったが。
どうでもよくなった。
「やっぱりおまえとは出来ない。」
そう言われるのは…何度目だ。
誘われては弾いて、出来ないと言われ。
おれの音は…必要ねえんじゃねえか…。
あいつの影もあったが本人かどうかなんてわかんねえ。
最後ふと消えた照明と共に見えなくなったから。
こんな甘えた状態で良い音はでねえ。
「…クッソ…ッ」
ダンっと自身の膝を叩く。
ガチャ…とドアを開ける音が鳴る
目だけそちらに向けた。
「…んだよ、ヤナさんか…」
ここのハコのオーナーヤナさん。
何度も世話になってる身として
投げやりながら会話をする。
「…おまえ宛にファンレターだ。いるか?」
「おれにか…?間違えてんじゃねえか?」
今日突発的に入ったおれに来るわけねえ。
「…お前が…執着してるもんじゃねえのか、これ?」
それ以上言わずに目の前に、前にも1度見た事ある
赤い封筒。
気だるげに封を切る。
黒崎蘭丸様へ。
貴方が貴方の音楽を引き続けるなら、私は貴方を追いかけます。
必ず、見つけます。今日みたいに。
だから…貴方は貴方の音を、信じ続けて下さい。
私は、そんな黒崎蘭丸のファンでい続けます。
そんな丁寧に書かれた文の下の余白に
汚くはないが走り書きのようなさっき書き足したような文字で、
今日も、貴方の音でした。忘れないで下さい。聴いてる人がいることを。
あの時の、あいつとおなじイニシャルが1番下に書いてある。
「…深雪っ…!」
強く握りしめる。
結局、おれは…
「おまえの言葉がなきゃ、ここまで弾けねえよ…。」
情けねえ。
あいつの想いに応えられないおれに。
みてろ…おれは…もっと上を行く。
おまえの目に触れるとこに。
おれはおれだと記そう。
だからベース頼む。と。
何度目だ。段々と気合が入らなくなる。
突発的な音ほど浅えからな。
まあだからといって、やるからにはやるが。
「わかった、やってやる。生半可な音出すんじゃねえよ。」
客は分かる。
そう言って楽譜を取る。
難しくねえ音の羅列。
いじるつもりだ。こんなのつまんねえ。
つまらねえ音を聞かせるのは客に失礼だ。
来てくれる奴らがいるからおれらは食えてる。
そんなおれ達の音に共感出来るやつに適当な音を聞かせられるかってんだ。
そういや…あいつはどうしてるんだろうか。
もう、あれから3年経った。
もう忘れられてるか?
それでもいい。
もう、あいつのために弾いてるわけじゃねえ。
でもあいつの言葉を忘れられる日はなかった。
あいつだけはまだおれを追いかけてくれている。
そんな錯覚にすら陥る。
「んなわけ、ねえだろうが…。」
乾いた笑いすら込み上げてくる。
おれはおれの音を信じる。
そうしてねえと…今ここで弾けてねえんだ。
あいつがいたから。あの時、おれの音をおれが信じないでどうする。って言ってくれた、あいつがいたから
おれは今まで弾けてる。
皮肉なもんだろ。
「蘭丸!もう始まるから、頼んだぜ!」
「…おう。今行く。」
ワァー!と湧くこのハコが好きだ。
熱気がおれを更に上へと連れってってくれるようなそんな熱さ。
軽くチューニングをする。
ああ。これだ。ここだ。
耳が正確に4弦の音を合わせる。
今日も湧くぜ。おまえとなら。
頼んだぞ…!
相棒のベースにそう伝えるように軽くメロディをなぞった。
最初こそ、楽しかった。
アレンジを加えたりした
だが、音は正直だ。
明らかにズレてきやがる。
ピッチも合わねえ。
汚ねえ。
チラッと見やる。
誰も何も気にしない。
ハコも湧いてくる。
…オイオイ。マジかよ…。こんな音で満足なのか…?こいつらは…。
いつも軽快に弾く弦が一気に重く感じた。
ただ汚い音に重ねる音ほど
苦痛なものはない。
本気 じゃない。こんな音許したくねえ…!
でもここでズラせばシラける。
苦しい…つまらねえ、おれの音はどこにある…?
そんな苦しい、つまらない音を掻き鳴らしながら
楽譜の音をなぞる。
早く終われ、とすら感じた。
1秒、1音、全て煩わしい。
おれがおれでなくなっていくような…
客席の声なんて聞こえてなかった。
聞こえることもなかった。
全て閉じたくなったから。
ただ、最後の最後…
「蘭丸っ…!」って
叫ばれた気がして、顔を上げる。
おれなんて、今日来ることを知ってるやつなんていないはずだ。
ただおれの耳はそいつを捕えた。
…まだまだガキだが、ただのクソガキだった女が
おれに手を伸ばすのを。
音なんてもう知らなかった。
甘えた。
あいつの手を捕まえたかった。
ああ、やっぱりこいつはおれを追いかけてくれている。
今も。
こんな
ひでえ音を鳴らしていても。
なあ、おれの音はおれだったか…?
深雪っ…おまえだろ…?
もう、その後のことは覚えてねえ。
二度とこのバンドには戻れなくなったが。
どうでもよくなった。
「やっぱりおまえとは出来ない。」
そう言われるのは…何度目だ。
誘われては弾いて、出来ないと言われ。
おれの音は…必要ねえんじゃねえか…。
あいつの影もあったが本人かどうかなんてわかんねえ。
最後ふと消えた照明と共に見えなくなったから。
こんな甘えた状態で良い音はでねえ。
「…クッソ…ッ」
ダンっと自身の膝を叩く。
ガチャ…とドアを開ける音が鳴る
目だけそちらに向けた。
「…んだよ、ヤナさんか…」
ここのハコのオーナーヤナさん。
何度も世話になってる身として
投げやりながら会話をする。
「…おまえ宛にファンレターだ。いるか?」
「おれにか…?間違えてんじゃねえか?」
今日突発的に入ったおれに来るわけねえ。
「…お前が…執着してるもんじゃねえのか、これ?」
それ以上言わずに目の前に、前にも1度見た事ある
赤い封筒。
気だるげに封を切る。
黒崎蘭丸様へ。
貴方が貴方の音楽を引き続けるなら、私は貴方を追いかけます。
必ず、見つけます。今日みたいに。
だから…貴方は貴方の音を、信じ続けて下さい。
私は、そんな黒崎蘭丸のファンでい続けます。
そんな丁寧に書かれた文の下の余白に
汚くはないが走り書きのようなさっき書き足したような文字で、
今日も、貴方の音でした。忘れないで下さい。聴いてる人がいることを。
あの時の、あいつとおなじイニシャルが1番下に書いてある。
「…深雪っ…!」
強く握りしめる。
結局、おれは…
「おまえの言葉がなきゃ、ここまで弾けねえよ…。」
情けねえ。
あいつの想いに応えられないおれに。
みてろ…おれは…もっと上を行く。
おまえの目に触れるとこに。
おれはおれだと記そう。