どうしてこんなトコにいるんだよォ!!
夢小説設定
この小説の夢小説設定洋南大学入学式での奇跡の出会いは、そう、まるで回し車の中のハムスター。
周囲は諦めつつ言わざるをえない、
「いい加減止まれと」
お相手は荒北さん
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荒北靖友は、青春を文字の如く駆け抜けた箱根を離れ1人、洋南大学の門に足を踏み入れた。
かつての仲間は誰もいない。
髪型が決まらないと言って櫛を振り回していた母親を新しい下宿先に置いて、これからたった1人で入学式である。
まぁ入学式が終わる前には来るだろう。
そもそも入学式なんてどうでもいい。
来るなと言ったくせにわざわざ付いて来た母親がどうしても写真が撮りたいと言うので、過去に中々のことをしでかした経験のある荒北は強く断れなかった。
「あぁーだっりーくそ...」
中学の時から周りが勝手に自分を避けてくれるという状況に居た荒北は、ここでも特に気にせず堂々と歩いていた。
すぐ目の前に、散らばった紙を掻き集めていた人物がいるにもかかわらず。
そしてその人物も周りが見えていなかった。
その人物は勢いよく立ち上がった。
その人物の頭が、荒北の顎に思い切り当たった。
つまりはこういうことである。
ガァキンん!!
中々に鈍い音だった。
「いいっ痛ぇ!?何しやがるテメェ!!!
「ッッ~~!」
相手の方は余りの痛みに声も出せないようだ。
荒北靖友はジッと見て気づいた。
コイツは女だ、どうやら女だ。
女の子には優しく、と両親からキツく言われ、しかも妹がいる荒北は、その時点で怒りがサッと消えた。
たとえ相手が男であっても箱学のオカンと呼ばれた荒北はちゃんと誠意のある対応をするのだが、相手が女の子であるとちょっと手荒さが減る。
「お、おい、大丈夫かよ」
「だ、大丈夫です...ごめんなさい」
「...いや、立ててねぇジャン。無理すんなって...いや、俺も見てなかったし...わ、悪かったなァ」
「い、いえ、お、お気になさらず...」
「いやいや無理ダッテ...あぁほら立てるかァ?」
「うぅぅ...」
荒北は蹲っている相手の腕を掴んで上に引っ張り上げた。
隠れていた顔が露わになる。
「医務室ってェ・・・あぁクソどこだ?」
「あ、あの、もう大丈夫なんで放っておいて」
「アァ!?んな涙目で説得力ネェんだよ!」
「だから!大丈夫ですって!」
「どこがだよ!俺だって顎痛いから医務室行きてぇんだヨ!!」
「じゃあ1人で行ったらいいじゃないですか!!」
「ウルセェ!!ついでにテメェも連れてってやろうかってんだよ!!!」
「いいですー!!放っておいてください!!」
「なんだ、うるさいと思ったら荒北か」
「アァ!?って金城!!お前なんでこんなトコに!?」
「俺も洋南大なんだ」
「ハァ!?マジかよ」
「ところで、それは新手のナンパか何かか?」
「チッゲェよ!!!コイツが俺の顎に頭突きカマしたからこれから医務室行くんだよ!」
「前見てなかったのそっちでしょうが!」
「なんだか仲が良いな。友人か?」
「ざっけんな!初対面だヨ!!!」
「そうなのか」
金城は驚いたような顔をして荒北と荒北に腕を持たれている人物を見た。
金城はインハイやらなんやらで荒北とよく遭遇していたが、こんな風に女子と話している所を見たことがなかった。
荒北の同級生はファンクラブができるほど女性に大人気だったから余計に覚えている。
「・・・医務室ならあっちにあったが」
「マジか!ちょっと行ってくるわ」
「だーかーらー!私はいいですってば!!!」
「あと5分で入学式始まるぞ」
「あー俺サボるわ」
「いいのか?」
「いいヨもう顎痛ぇし」
そう言って荒北はズリズリと医務室の方へ引きずって歩いていく。
「私はいいですって!!」
「んな顔で入学式行く気か?いいから行くんだヨ!!」
金城は2人を見送ってから1人、入学式を行う大講堂へと足を進めた。
どうやら面白い学校生活になりそうだ。
「なんか冷やすモンあります?」
医務室にいた常駐看護師は驚いた。
先程から緊張で気分の悪くなった新入生ばかり相手にしていたから、まさかあんな堂々とした目つきの悪い青年が女性の腕を掴んでここに入ってくるとは思わなかったのだ。
「え、な、何!?ケンカ???」
「いや、ぶつかったんです。俺の顎とコイツの頭が」
「え、え、大丈夫?」
「わ、私は大丈夫で」
「往生際が悪いっつうのー!ここまで来たんだからァちゃんと見てもらえって!!」
「う・・・」
「あーほら泣いてんジャン・・・」
この青年は見た目と口調のわりに優しさが見え隠れしていた。
意外に思った看護師はこう言った。
「え、えっと彼女さんかな・・・?」
「ハァ??」
「ちがいます」
「あ、そ、そうなのごめんねぇ!おばさん勘違いしちゃったわ!!あ、ここに名前とか記入してちょっと待っててくれるかな?」
看護師は大慌てで記入表を2人に渡し、奥の部屋へと呼吸を整えに行った。
こういう時におばさんって便利だわ、などと思いながら。
「ん。自分で書けるか?」
「はい・・・」
理学部生物学科1年
清家 彰子
「ヘェお前理学部か」
「まぁ一応」
「・・・お前の名前なんて読むんだ」
「・・・せいけ あきらこ 」
「タイソウな名前だなァ・・・」
「・・・あんまり、好きじゃない。自分でも」
「ふぅん」
荒北も同じように記入する。
工学部工学Ⅲ科1年
荒北 靖友
「あらきた?」
「そ。あらきたやすとも」
「初めて見た」
「だろうな」
一息ついてきた看護師が氷嚢を持って戻ってくる。
「おまたせー。えっと、頭と顎だっけね?あらタンコブできてるわ」
看護師は清家の頭に氷嚢を置く。
続いて荒北の方を向き
「あら、こっちも腫れてるわね」
と言って湿布を貼り付けた。
「どうする?もう入学式始まってるけど、出てくる?」
「いや、あんま興味ないんでサボります」
「あなたはどうするの?」
「わ、私は、」
清家の身体は正直だった。
初めての一人暮らしで、今日の朝までバタバタと準備やら作業やらをしていた。
緊張も相まって、ここ2、3日ほぼ寝ていない。
正常な判断ができないというよりもまず言葉が出ない。
「あー、お前もサボりゃいいんじゃねェ?今さら行ってもしゃあねぇダロ?」
そんな様子を感じとったのか荒北が言った。
看護師も顔色の悪さに気づいたようだ。
「ちょっと寝といたらどう?ベッド空いてるし」
は素直に従うことにした。
「す、すいません・・・」