三人寄れば
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数台しかすれ違わない車の数に、時期外れなドライブを予感させた
こんな真冬に海って
しかも男三人て
未だ納得出来ない土方を余所に、車は浜辺に到着した
停止すると同時に勢いよくドアを開け、飛び降りる二人
靴に砂が入らないようにしたつもりが無駄だった
「土方さーん、ライトそのままでお願いしやす。真っ暗で何にも見えなくなるんで」
エンジンを切ろうとした土方が手を止める
車のライトを海に向けると、その明かりを頼りに三人は波打ち際まで近付いた
「さっむ!!ハンパねぇ!マジハンパねぇえ!!」
両腕を抱いて身を縮こめる土方は、ガチガチと唇を震わせながらも煙草をくわえている
「土方さん、コートとかないんですかィ?あと手袋とマフラー」
「んなもんあるわけねぇだろ!自分で用意しろよ!」
「なんの為の副長だトシ。がっかりだぞ」
「真選組の為の副長ですけど!?いいからさっさと帰ろうぜ?寒いだけだろ!」
「まぁまぁ、そんなこと言わねェで少し歩きやせんか?」
「そうだな、明かりが届く範囲でぶらつくとするか」
「……どんだけ青春してーんだよ……はぁ……5分な!それ以上は無理だかんな!」
結局ついていく土方に、寒いからくっつこうと肩を組もうとする近藤
気持ち悪いと離れた所に肩を組むと見せ掛けて沖田のエルボーが飛んできた
避けようとして転がる土方が砂まみれになる
してやったり顔の沖田に、いつもの如く豪快に笑う近藤
きっと場所のせいだろうと、二人の笑顔に怒るに怒れない土方は立ち上がり砂をほろった
「大丈夫だトシ!多少汚れたってお前の男前度は変わらんよ」
「そうでさァ。よ、真選組一の色男~べしゃっ」
調子に乗って投げ付けた泥団子に流石にキレた
「総悟ォォォ!!」
足場の砂をもろともせず走る二人の部下に、近藤は腕を組みながら目を細める
いつもの事ながら、まるで兄弟の様にじゃれ合う二人に頬が緩んだ
「おーい!二人共あんまり遠くに行くなよぉ!暗くて見えなくな…………………………………」
近藤の呼びかけに土方と沖田は戻ってきた
土方の体は泥まみれで、追いかけたものの返り討ちにあったのが伺えた
「近藤さん、どうかしやしたか?なんか急に声が聞こえなくなりやしたけど?」
「はぁはぁ……ったく……ドロドロじゃねぇか!近藤さん、何とか言ってやってくれ………って、近藤さん?」
はしゃぎ戻った二人の声に返事をしない近藤
何やら一点を見つめて固まっている
その姿に異変を感じて更に部下二人は近付いた
「どうしたんだ近藤さん?何が……」
言いかけた所に近藤の腕が動いた
すうっと上がった右腕は、人差し指だけを伸ばしてある方向を指差している
車のライトがギリギリ照らしている遠くの波打際
土方と沖田の肩の間から指を差して呟いた
「…………なんか……いる」
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